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もに、このSI値でガスの供給停止の直接的な判断とする内容の答申が出されている。

 

地域をブロックして安全を確保

ガス導管は、工事や事故で部分的に支障をきたしても、ガスの供給が続けられるようネットワーク化されている。しかし、地震により、ある地域に被害が集中した場合には、その部分の導管を切り離し、他に影響を与えないようにすることが必要となる。そのための方法が「導管網のブロック化」である。ブロック化には被害の程度に応じて2通りの方法がある。

 

低圧導管網のブロック(中ブロック)

ガス導管の中でも直接お客さまにガスを送る低圧導管は、材料面や口径が小さいため、中圧導管よりも被害を受けやすい。低圧導管は、境界にあるバルブを常時閉止しておき、独立した100の導管網を形成している。1つのブロック内のお客さまは、約3万〜10万件で、およそ30基の地区ガバナを通じて、ガスを供給している。この地区ガバナに取り付けられたSIセンサーによって、導管や構造物に被害が生ずるような地震動を感知すると、ガスの供給を遮断するようになっている。

 

中圧導管網のブロック(大ブロック)

中圧導管は、耐震性に優れた材質や接合方法を用いているため、地震によって損傷を受けることはまれである。しかし、大地震によって万が一損傷を受ける場合に備えて、供給区域の中圧導管を15の大ブロックに分割できるよう、速断バルブが取り付けられている。それぞれのブロック内には3基以上地震計が設置されており、地震動の測定値はただちに専用無線で本社の「防災・供給センター」に送られる。

ブロック内の地震計が一定以上の値を記録したブロックについては、本社からの操作によりバルブを遮断し、そのブロックだけを切り離す。しかし、大ブロック内には工場やガバナーステーションなどのガス供給源が存在するため供給は継続される。さらにその後も調査を続け、被害が大きいと判断された場合には、ガスの供給をストップさせる。 こうして、ブロック化による分離操作で、被害の大きい地域のガス供給は停止するが、それ以外の地域では継続してガス供給を行うことができる体制になっている。

 

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地震時導管網警報システム(SIGNAL)

大規模地震の際に、中圧ガス設備に大きな損傷を受ければ、大ブロックの供給を停止し、二次災害を防止することが必要である。しかし、地震直後には電話回線の輻輳などにより、ガス漏れ等の被害情報の入手に時間がかかることが予想される。このため、地震の発生と同時に、どのエリアでどれだけの被害がおきたかを高精度で推定できるシステムが必要であり、そのために開発され、実用化されたのが「地震時導管網警報はシステム(SIGNAL)」である。SIGNALは地震モニタリング部と推定計算部の2つの部分で構成(図-5)されている。推定計算部のうち「被害推定サブシステム」では、供給区域内の331箇所に設置されたSIセンサー、5箇所の基盤地震計、および20箇所の液状化センサーから無線で送られてくる地震情報と、地盤データや導管・需要家データなどのデータベースから被害状況を地域的に精度よく推定する。また、「震源推定サブシステム」では、5箇所に設置された基盤地震計から伝送されてくる地震加速度波形データをもとに、地震の震源位置やマグニチュードを推定すると同時に距離減衰式による概略被害推定

 

 

 

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