地震対策の目指すもの
地震による都市ガス施設への被害は、機能面、安全面の両面から、その影響を考慮しなければならない。このような観点から当社の地震対策は、次の3点を柱としている。
その第1の柱は、地震に対して強い設備を作り被害を最小限にとどめ「予防」することである。
第2の柱は、ガスに起因する火災や爆発など二次災害を防止するための「緊急措置」である。
そして第3の柱は、万が一ガスの供給を停止した場合、早期の「復旧」に全力をあげるとともに、被害の少ない地域へのガスの供給を継続させることである。
地震に強い設備で被害を予防
ガスの製造工場、ホルダ、高圧導管などの主要設備は、関東大震災クラスの烈震にも耐え得るように設計するとともに、厳しい管理と検査によって十分な耐震性を維持している。
製造設備においては、地盤液状化に対する地盤改良対策を施し、液状天然ガスを地下式にすることで構造的な震動増幅を抑えるとともに、万一の損傷時にも、流出による二次災害を防止するなどの対策を講じている。
ガスホルダーの球体部には、強度のある高張力鋼を用い、また、基礎は支持基盤まで杭を打ち込み、強固な鉄筋コンクリートで造っている。また地震による球体の震動を抑えるため、オイルダンパーを設置するとともに、導管接続部に伸縮管を用い変位を吸収する機構となっている。
ガス導管のうち、とくに高中圧導管については、路線に沿った地盤調査を詳細に実施し、それに基づいて烈震にも耐え得るよう設計・施工をしている。導管材料は強度が強く展延性にも優れた「溶接接合鋼管」が使われている。また、ガス導管のうち約90%以上を占める低圧導管については「ガス導管耐震設計指針」(日本ガス協会)に基づいた構造のもの、すなわち″メカニカル継手″″可とう性配管″″ポリエチレン管″など、地盤の影響を吸収し、地震による損傷を最小限にくい止めるような導管を使用している。
被害規模に応じた緊急措置
いったんガスの供給を停止すると、安全の確認を最優先に復旧をはかるため、多大な労力と時間を要することになる。したがって、ガスの供給をむやみにとめるようなことはさけなければならない。
一方、施設に被害が生じた場合は、そのままガスの供給を継続すれば二次災害を引き起こす可能性がある。また、被害の程度や範囲は、地震規模や震源の位置によって大きく異なる。被害が集中している地域を特定し、部分的にガスを止めることが重要である。図-3は地震時の緊急措置の概要をまとめたものである。右側に工場があり、高圧、中圧、低圧の各導管を経て、各お客さまにガスは送られるが、設備の耐震性からいえば、上流、すなわち工場に近い設備ほど耐震性が高くなっている。したがって被害が生ずるとすれば、まずお客様に近いサイドから地震規模に応じて上流側に拡大すると考えられる。したがって、東京ガスでは、緊急時における緊急停止装置を次のように段階的に行うこととなっている。
お客さまのもとで瞬時に停止
地震発生時、屋内のガス施設が損傷し、ガスが漏れたりガス使用中に着火し、火災を引き起こすことが考えられる。そこで、ガスメータに感震器を内蔵し、200ガル(震度五程度)になると自動的にガスを止める仕組みとなっている。これはマイコンメータといい、通常時はガスの使用状況を監視し、屋内のガスの漏洩や長時間の使用を認めた時にガスを止める、いわば安全装置である。電気でいえば、ブレーカーに相当するものである。もし、異常がなければ、お客さまの手で簡単に復帰できるものである。
ガスメータは10年に1度、取換えることが義務づけられているが、東京ガス管内では、すでにほは100%このマイコンメータが取り付けられている。これによって、地震発生時、あわててガスの栓をしめる必要もなく、身の安全を確保することに専念できる。
低圧導管へのガスの供給停止