災害に備えて〜東京ガスの取り組みの現状〜
東京ガス株式会社 理事 防災・供給センター所長 根岸 七洋
はじめに
都市ガスは厨房、暖房あるいはお風呂など家庭生活を支える民生用のエネルギーとしてだけではなく、クリーンで経済的なエネルギーとして今や都市機能や産業を支える欠かすことのできないエネルギーとして、深く浸透し、確固たる地位を占めるに至っている。このような状況は一方において、どのような事態にあっても安全で安心できる都市ガス供給への要請を一層高めることとなった。これに応えるべく、当社では、ガスの製造から供給段階はむろんのこと使用段階に至るまで、トータルな安全対策を進めてきている。その結果、中毒・爆発・火災など都市ガスに起因する事故は近年大幅に減少傾向にあるものの、いまだ絶滅の域に達しているとはいえず、ことに、消費段階における機器の使用ミスによる事故の防止が大きな課題となっている。このため「正しく使えば安心」といった従来の考え方ではなく「誤って使っても事故を起こさない」設備や環境を積極的に提案し、提供していくことが、重要であるとの認識から諸々の取り組みを図っているところである。一方、自然災害、とりわけ一瞬にして都市機能を損ないかねない地震に対する備えは、首都圏の主要なライフラインの一翼を担う立場から、重要な課題として捉え、ソフト、 ハード両面から諸対策等を講じてきている。ここでは、消費段階を主とした日常的なガス事故防止対策と地震防災対策についての取り組みの現状について、その概要を述べることとする。
1. 日常的なガス事故防止にむけて
ガス事故防止にむけての対策と体制
ガス事故を現象別に大別すると、中毒・爆発・火災、そして原因は排ガスによるもの、漏洩した生ガスによるもの、過熱によるものに分けられる。事故防止は、これらの事故原因を種々の角度から分析し、再発防止をはかることであるが、当社では次の3つの考え方を基本としている。
(1) 事故や漏洩・故障等の発生しにくい設備を普及していくことによるハード対策の実施。
(2) 正しい使い方の周知・定期点検等によるソフト対策の実施。
(3) 事故を未然に防止する緊急出動体制の実施。
具体的なガス事故と安全対策の概要を図-1に示す。
総合システムで実現する家庭の安心
24時間マイコンが守る
「マイコンメーター」は電気のブレーカーに相当するもので、マイコンが24時間ガスの使用状態を監視して、ガス漏れ、機器の消し忘れ、地震発生時などの異常時にガスを自動的に遮断する。また、ガス漏れを迅速に検知する都市ガス警報器やCOの発生を検知する不完全燃焼警報器と連動させることにより、より充実した安全システムとなる。
部屋への入口、ガス栓でチェック
ガス漏れの多くは、ガス栓の誤開放やゴム管のはずれである。「ヒューズコック」は、過大なガスが流れると、ガス栓のボールが浮き上がってガスの通過孔をふさぐ安全ガス栓である。既設ガス栓にヒューズコックと同様の過流出防止機能を持たせるために、