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◇五篠市消防本部◇(奈良)

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五條市は、奈良県の南西部、紀伊半島のほぼ中央に位置し、西は和歌山県、北西部は大阪府にそれぞれ接しており、大台山系を源とする清流「吉野川」が中央部を流れる、緑と水が豊かな山紫水明の地として親しまれている。

当市は、奈良・吉野・和歌山をつなぐ結節点で近畿圏・紀伊半島における交通の要衝となっており、東部には、インテリジェント工業団地「テクノパーク・なら」が開発され、若者に魅力ある産業ゾーンとして発展している。

また、天平の香り高い栄山寺の国宝「八角堂」、「梵鐘」など数多くの文化遺産が市内の至る処に点在しており、天誅組の挙兵により明治維新魁の舞台となったことはあまりにも有名な史実である。

消防本部は、昭和38年に発足し、現在、1本部・1署、47人の職員が9分団・29部、303人の消防団員とともに市民約37,000人の防災を担っている。

★やればできる!

当本部では、昭和59年から救助技術大会に参加し、消防救助技術東近畿地区指導会に8回挑んだがあと一歩及ばなかった。しかし、昨年は念願の第25回全国消防救助技術大会に出場し、「ほふく救出の部」で見事入賞を果たした。

″やればできる″ことを証明し、職員の士気は大いに高まった。

★救急業務の高度化をめざして

現在、救急救命士の養成、高規格救急自動車の増車等、救急業務の高度化を積極的に推進しており、地域住民等を対象とした普通救命講習にも傾注している。

講習修了者が住民の20%を超えることを目標としており、その一端として平成7年度には全消防団員に、昨年度は市職員450人に講習を実施した。その甲斐あってか、溺れた子供に普通救命講習を修了した父親が、心肺蘇生法を実施して救急隊員に引き継ぎ、一命を取り留めるといった、嬉しい事例も報告されている。

★震災対策の推進

阪神・淡路大震災を教訓として、「わが家の防災対策」を作成して市内全戸に配布した他、神戸市消防局から講師を招き防災講演会を実施した。また、15地区自治会長を中心に、防災コミュニティ懇談会も行っている。

一方、地域防災の要となる全消防団車両への無線の搭載及び救助用資機材(エンジンカッター、チェーンソー等)を29部の全てと地区ごとの防災倉庫等5箇所に配備した他、平成7年度以後に耐震性貯水槽7基を整備した。

★防火訪問でふれあい!

火災予防運動では「防火訪問でふれあい」をテーマに、一般家庭における住宅防火診断、独居老人宅の防火訪問を地元消防団員、民生委員とともに行い防火指導を通じて“ふれあい”を図っている。

また、市内の小・中学生から募集した防火ポスターを街頭に掲示しており、さらに、3団体・150人の幼年消防クラブ員が、老人ホームの防火慰問を行うとともに、出初式では一輪車の演技を披露するなど、火災予防の啓発に一役かっている。(写真)

★組織体制の整備・充実

当本部では、組織の活性化の一環として、市長部局との人事交流を実施するとともに各種研修への積極的参加を推進し、職員の資質の向上を図っている。また、消防緊急通信指令システムを導入し、災害地点の確実な把握と出動の迅速化、招集連絡の自動化など組織体制の整備・充実を行っている。

奥村消防長は、「主役は住民であることを常に念頭に置いた消防行政を職員一丸となって推進している」と力強く語られた。

多岐にわたる消防業務に、あくなき挑戦を続ける47人の志士にエールを贈りたい。(丸山 英年)

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