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ため、有効注水ができず早期の火勢制圧には至らず、南側一般住宅への延焼阻止の放水活動が精一杯の状況であった。

付近の水利状況は比較的良好で、本署第一・第二消防隊とも出火建物西側及び北側の防火水槽にそれぞれ水利部署。スムーズに包囲隊形を完了したが、西側から進入した第一消防隊は、注水死角と建物倒壊危険のため接近できず活動は困難を極めた。

第二消防隊は、出火建物北側から進入したが、出火部分から中央通路部分と、この通路北側に接する塗装工場・ガラス工場等にはばまれ、塗装工場スレート屋根からの消火活動を強いられ、活動範囲も限定されたことから、延焼防止に苦慮した。

4. 延焼拡大要因

(1) 火災発見、通報・連絡の遅れによって初期消火の時期を逸したこと。

(2) 古い木造建築物の2階部分からの出火で、プラスチックトレー、ダンボール等可燃性の収容物が多く急速に延焼拡大したこと。

(3) 出火建物南側のスレート塀、3階部分の鉄扉開口部も全て閉鎖され、倉庫火災に類似する火災形態であった。また、度重なる増改築等により、多方面からの進入が容易でなく、署・団合わせて8台16口の包囲体形での火災防御活動にあたったが、活動障害のため有効な注水効果が得られなかったことなどが挙げられる。

おわりに

本火災の拡大要因については前述したが、最大の要因というのは「防火管理意識の甘さ」である。我々の事業所に限って「まさかにこのような規模の火災は起こらないであろう。いわゆる「油断・気の緩み」ではなかったのか。当事業所では、消防法令等に違反する事項は見あたらないが、ごみ集積場等のぼや火災が過去3度にわたり発生している。また、以前から自動火災報知設備の誤発報が再々起きていた。予防査察を通じての改善指導にもかかわらず、これらの原因究明や対策は十分とはいえなかった。

こうした状況の中で、出火当日、守衛室の自動火災報知設備が12時05分に作動した。関係者には「また誤報では」、という意識が恐らく働いたのであろう。ベル停止にして内線電話で総務課長に報告、さらに担当の製造部へ確認の電話。これを受けた女子パート員は詳細が分からず、従業員に尋ねている。そうこうしている間に守衛が外に出て初めて火災を発見した。この様な不適切な初動対応によって、初期消火もできず火災は一気に延焼拡大をした。消防計画は作成されているが、従業員200人への周知は不十分であり、適切な自衛消防活動がなされなかったのは残念であった。

当本部としては、出火後特別予防査察を実施、特に防火の原点となる消防計画の見直しを指示。再編成された組織により、特別消防訓練によって自衛消防組織が有効に機能するかの検証を行った。また、新メンバーとなった4月中旬には、監督者以上を対象にした防火研修会を実施し防火の推進役を養成。文字どおり職場ぐるみの自主防火体制の確立を図り、再発防止に向けて万全を期している。

(植田幸男)

 

救急・救助

高速道作業車両にトラック追突、7人死傷

神崎地区消防事務組合消防本部(佐賀)

 

はじめに

当本部は、佐賀県の東部に位置し、6町村で構成された管内面積209.65k?u、人口50,409人。消防体制は、1本部・1署・1出張所、消防車両13台、救急車3台、職員82人で消防行政に対処している。

管内は、高速道をはじめとする交通網の整備に伴い、近年企業誘致が積極的に進められている。また、吉野ケ里歴史公園が国営公園に指定され、レジャー施設の立地で産業、観光面で大きな変貌をみているところである。

ここに紹介する事例は、高速道バス停留所で待機していた作業車の列にトラックが突っ込み、車外にいた警備員2人、トラック運転手と助手席の幼児が脱出不能となった事故の救助活動事例である。

1 事故概要等

(1) 発生日時 平成8年3月22日(金)

14時20分頃

(2) 覚知時間 14時22分(道路公団専用電話)

(3) 発生場所 長崎自動車道下り17kmバ

 

 

 

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