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次に、船橋市消防局及び川口市消防本部から「鑑識及び鑑定に係る手段及び要領」についての議題が提示された。これは今回参加したどの消防本部においても、一番の関心事であり、他本部の行っている方法についての意見の交換ができた。特に参考となる鑑識・鑑定手段としては、「警察と合同で鑑識を行う(市川市消防局ほか)」、「管内の大学の研究室等に依頼して行う(浦和市消防本部)」、「署員の中から電気や化学等の専門知識を有する者を事前に把握しておく(東京消防庁)」などがあげられた。

また、製造物等の火災において鑑識を行うにあたっての留意点として、メーカー側から提出された報告書を火災調査書類に添付し、原因判定としている本部も多く見られるが、メーカー側に報告書を提出させるにしても、消防が主体となって火災調査を行う必要があり、特に次の点について留意すべきとの意見があった。

ア 消防法に基づく火災調査を行うというスタンスに立ち毅然とした態度で行う。

イ メーカーには積極的に質問を行うが、客観的な事実だけを確認し、決してメーカー側の意見を鵜呑みにしない。

ウ メーカー側が再現実験等を行う場合は積極的に立ち会う。

工 同種の機器等の火災事例の収集を行うとともに、当該製品がリコール対象の該否について確認する。

なお、「鑑識にとは、焼けた状況を客観的に観察することであり、あまり大袈裟に考える必要はなく、最終的に出火原因の究明までに到らなくても、客観的事実を淡々と調べればそれで十分鑑識として通用するのではないか。(東京消防庁)などの意見が交わされた。

議題の最後として、PL法施行後の紹介及び情報公開事業及びその対応方法についてとして意見交換が行われた。

既に、多くの自治体が情報公開条例を制定しており、今後、火災調査書類についても開示請求が増えることが予想されていることから、各消防本部がある程度共通した開示・非開示の判断基準の認識を持ち、消防本部により対応に大きな相違が生じないように努める必要があるとされた。

(2) 特異火災事例紹介

まず、比企広域消防本部から、平成7年11月に発生した「東洋製罐株式会社埼玉工場」で発生した製品自動倉庫の火災原因調査経過報告が行われ、大規模倉庫の火災調査に際し、消防庁及び消防研究所等と連携し、困難な原因究明を行った際の経験について説明がなされた。

また、東京消防庁からは、最近の家電製品に係る火災事例と無線電波により誤作動した石油ストーブの火災についての紹介が行われた。

 

おわりに

製造物責任法の施行以来、製品の火災に係る原因究明は市民の関心を高め、各方面から「科学的火災調査」や「調査技術の向上」などが叫ばれる中にあっては、調査の担当者の責任は益々大きくなっている。

このような状況にあって、多くの調査担当係長が一堂に会して意見を交わす機会を設けることは、非常に有意義なことであり、今後も火災調査技術のレベルの向上と火災調査に関する情報交換の場として継続的に開催していく必要があろう。

 

問い合わせ先

東京消防庁予防部調査課 損害調査係

電話 03(3212)2111(大代)

内線 5354

 

 

 

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