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相手をひきつける話し方

(社)言論科学振興協会 理事長 江木 基彦

 

失敗から学ぶ

 

話す能力が、最高に磨かれる方法があります。それは、失敗から逃げないことだと確信します。世の中、最初から、失敗を期待する人はいません。それなりに、準備をして、話す場にのぞみます。でも、でも、失敗をしてしまうことがあるのです。

うまくいけばいくで、いいのですが、失敗をするのも人間です。その主人公は、相手ではなく、どこまでも自分です。自分に問題があるからダメだったのです。相手は、こちらの欠点をついてきたのです。野球でも、サッカーでも、こちらの強いところは、狙ってきません。弱いところを、狙ってくるのです。むしろ、よくぞ、気づかせてくれた、と考え、感謝して、自分の欠点を補強していけばいいのです。

話し方の本、アナウンサー読本、文法書、国語の辞書をマスターしたからといって、実際の場でうまくいくとはかぎりません。話す場というのは、ワケがわからないのです。いくら準備をしていっても、ワケがわからないのです。その場面での自分を見つめる以外ないようです。それが、話す技術が進歩するもっとも早い方法でもあります。

ところが、相手は、問題点を教えてはくれません。ましてや、大勢であればあるほど物理的に不可能です。自分で気づく以外ないのです。わからなければ、この文章を読んで、一生懸命に考えてみてください。かならず、どこかにぶつかるはずです。「参考図書は?」ですって、どこまでも皆さま自身です。話すのは、人ではない、皆様自身だからです。

とにかく、勇気をだして話していく。話した後で、感じたことがありましたら、その感じたことを紙にどんどん書き出してみてください。はなしはかんたんです、それを2度としなければいいのです。ダメから脱するには、後で、反省するか否かにかかっているのです。また、その悲しかったことを覚えていてください。裏に、悲しみがたたえられた話には、すごみがあります。人生、いいことばかりではありません。反省という自分の舌は、自分の心のキズ口に唾液というすばらしい薬を塗ってくれます。

 

あきらめず最後まで話す

 

権力をカサに、守られた形で話をしている人がいます。それで、人が、簡単に、話を聞くとでも思っているのでしょうか。そうでなくとも、人は、顔ではニコニコしていても、おなかの中では、なにを考えているのかわかりません。

 

「なんだ、今さら、わかっていることをしゃべるなんて、冗談じゃないよ」

 

「いそがしいけど。まっ、聞いてやるか。ありがたく思えよ」

 

「早く、終わんないかな。カヨチャン、どうしているかな」

 

 

 

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