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めには、一人ずつの子供と本当によく話し合いをし、何を考えているか、何に喜びを感じているかをしっかり認識することが必要なんです。でも今の学校ではそれがなかなかできません。

堀田 やはり校長先生、あるいは園長先生の力が大きいでしょう。「太陽の子保育園」設立の時に書かれたものを拝読しても、保母さんたちがそれぞれ自分が教育に対して思うこと、問題点をきちんと書いて、園長さんがそれをしっかり受け止められた。通常の学校の現場ではなかなかむずかしいんでしょうね。

鹿島 管理社会なんですね。校長さんも本当に気の毒だと思います。むしろアウトサイダーで生きてきたぼくらのほうが自分の好きなことをやってきたともいえる。ぼくはこの仕事をしたいという気持ちだけでやってきましたが、それが校長や教頭からは目の上のこぶの感じで、学校を変わる時もなかなか他の校長さんも採ってくれなかったんですよ(笑)。

堀田 鹿島先生はいろいろな賞をもらわれて、社会的にも大変高い評価があるのに、残念な話ですね。

鹿島 自分のクラスで何か新しいことをする、それが、できない。みんなと同じじゃないとダメなんです。「来週の図画の時間は何を描かせましょう?」「そうですね、先生の絵を」「画用紙はこの四切りで、胸から上を描かせて、バックはこの色とこの色で」とか。だから学年全部、貼ってある絵はみんな同じ感じになってしまいます。確かに自由を重んじた教育というのは、教師にはしんどいんですわ。日本の一斉指導教育は一番効率的に効果が上がる指導法だといわれていますし、その部分もあります。でも、それでは個性は埋没するし、本当の思考力はつきませんよ。

堀田 ワシントンの日本大使館に赴任した時、息子たちの小学校や幼稚園に見学に行ったんです。テーブル式に好きなところに座って、勝手に勉強してる。先生はまとめて教えないで、それぞれの子供に応じて教えているんです。ある時、私が授業参観に行った時に、いくら見てもうちの息子がいないので、どこにおるかと思って一生懸命探したら、大きなゴミ箱に隠れてた(笑)。

鹿島 それはおもしろい(笑)。

堀田 まったくとんでもない奴ですよ(笑)。それでも先生は何もいわないんですね。個性を伸ばすというのはこういうことなのかなと、その時思いました。管理されている先生に「子供を管理するな」といっても無理ですよね。子供の個性を伸ばすためには、まず教師の側が個性豊かに教鞭に立てられるようにしないといけない。

鹿島 ぼくは表現という手段を使いましたが、何だっていいんです。子供の豊かな個性をはぐくむ上で、何かをやり遂げようとする先生がもっともっと増えてきたらいいなと、そう願っています。

堀田 私なんかはもう、先生のご本を拝読して、うらやましくてしょうがない。私は検事が大好きで検事になりましたけども、教職も子供も大好きですから、もし検事になっていなきゃ学校の先生になって、校長にはなろうと思わずにきっと最後まで現場でやってたと思うんです。だから鹿島先生のお姿を見ていると、本当にうらやましい。どうぞこれからもぜひがんばってください。今日はありがとうございました。

 

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