安心感の大きい特養だが、生活の質がどこまで保障されるかは疑問
さて、年老いて暮らす場というと、みなさんはどこを思い浮かべますか?自宅を除けば、その代表格は「老人ホーム」なのではないだろうか。なかでも特別養護老人ホーム(以下特養)は、寝たきりや痴呆症、またはそれに近い状態にあり、常時介護が必要な六五歳以上のお年寄りが入る施設として、何はともあれ安心感は高い。だが、措置入所(つまり自分で希望するだけでは入れないし、入る場所も行政が決定)ということもあり、「住まい」というやわらかい語感とは、およそかけ離れた印象が強い。できれば、自分は入りたくない、親も入れたくないという思いを漠然と持っている人も多いはずだ。
しかしですよ、みなさん、そうもいってはいられません。このページを今読んでいる若い貴方だって、いずれ特養のお世話になることは十分考えられますゾ。というわけで、まずは、特養の現状を改めて簡単に見てみよう。
特養は、平成八年一〇月一日現在、全国に三四五八施設あり、二三万四九四六名が在所しているが、この施設の長所は(逆に短所にもなるが)、身の回りのお世話に対する安心感。これって、年を取ったときに住まいに望む、もっとも大きな要素のひとつでしょう。ここでは三度の食事と入浴、排泄などの介助を、寮母さんなどホームの職員がしてくれるうえ、医師と看護婦も配置されている。また、理学療法士や作業療法士による機能回復訓練も行われ、レクリエーションなどのメニューも豊富。利用者負担も本人または扶養義務者の負担能力に応じて、月ゼロ円から二四万円ほどと、後述する有料老人ホームに比べて格段に安い。
「体が不自由になると身内の者にも遠慮するし、特養ならやってほしいことも遠慮せずに頼めるので逆にホッとしている。みなさんよくしてくれるので、最期の看取りもやってもらえたらうれしい。病院で死ぬのはイヤだ」
こう語るのは、自ら家族に申し出て特養に入った