社会の変化に伴い、老後の住みかの問題がクローズアップ
大家族主義の色合いが残っていたこれまでは、個人で老後の住みかをどうするかなどと、あれこれ考える必要はなかった。というのも、お年寄りの多くは家族の支えを得てできる限り自宅で暮らし、最期も自宅か病院で迎えるのが一般的。一人暮らしなどそれがむずかしい少数の人たちが、特別養護老人ホーム等の公的なケア型施設のお世話になってきたからだ。
だが、少子化、核家族化、女性の進出、さらにはすでに高齢化率一五%を超えた高齢者層の急増と、気がつけば世の中は激変の真っ最中。一方では、平均寿命も延び、老後といえど、もはや病と戦うばかりではなく、イキイキと健康的に暮らしている人も多く、暮らし方の幅も広がってきている。ひと口に老後の住みかといっても、元気なうちはどう暮らしたいのか、さらには要介護状態になったとき、終いの住みかをどう考えるのかという、従来は良くも悪くもあまり考える必要のなかった問題がクローズアップされてきた。そしてそれに伴い、老年期の住みかの選択肢も広がっている。
そこでまずは、老後と住まいという大きなくくりの中で、それぞれの実情をのぞいてみることにしよう。