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院に叩き込まれてね、何本も針を刺されて、看取る人もなく一人寂しく死んでいくのかなあと、私なんかもう半分覚悟を(笑)……。ただ、最期には、やはり自分の人生を振り返ってみるんでしょうね。

堀田 (うなずく)。

守屋 その時、まあまあの人生だったなあと自分を納得させて目をつむれるために何が必要か、やはり先ほどの「仕事」と「楽しみ」、この両立だと思うんです。仕事はもちろんですが、「ああ、楽しいなあ」と思える自分に合った楽しみですね、そういう楽しみを一つも持たない人生は寂しいですね。

堀田 仕事で貢献した、あるいは子供たちをきちんと育てた、地域社会でいろんな活躍した、とにかく何でもいいけれども、自分が生きてて良かったなあという思い、これがないと、死ぬのはますます恐ろしいですし、悔しいでしよう。

 

これ天命にあらずや

命はすなわち天に在り──劉邦

 

堀田 「良く死ぬ」ということは、まさに、いかに「良く生きたか」なんですね。人生の最期をしっかりと思い切れるかどうか、中国の先人の中で、どなたか例に挙げていただける方はいますか?

守屋 死に際で、ああ、いいなあと思っているのは、有名な「項羽と劉邦」の劉邦なんですよ。劉邦という人は名もない農民の息子に生まれて天下を取って皇帝になりました。この人の死に際がいいんですね。

堀田 ほほう。

守屋 皇帝になってから七年後に、反乱の鎮圧に自ら行って流れ矢に当たって負傷して、その傷が悪化して死病になるんです。奥さんの呂后が心配して、天下に「おふれ」を出し

 

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