いるきらいがあるなあと感じますね。今の豊かな社会を築いてきた世代ですからね、その分を返してもらうくらいの気持ちでいいと思うんです。ただ、やはり自分も何かを支えいくという気持ちだけはなくしたらダメですね。中国古典には「恩」という考え方があります。「人から受けた恩は忘れるな。自分が人に与えた恩は忘れてしまえ」。そして「恩は無理して返す必要はない。十分余裕ができて返せるようになったら返せばいい。ただ、忘れないで覚えておけ」と。
堀田 戦後、「親の恩」「人の恩」というものに対する感覚がどんどん薄らいでいきました。それまでの、「恩の押しつけ」に対する反発なのでしょうが、これも結局は、どう自分を大切にするかということにかかってくると思います。最後まで充実した人生を生きたいという気持ちになれば、特に押しつけなくても、自然に、自分がそう生きるためにどれだけ人の力が必要なのか、どれだけ助けてもらっているかが認識できるはずですから。
守屋 受けた恩と与えた恩、プラスマイナス・ゼロ、できれば多少の持ち出しぐらいで人生を完結させれば、それでまあまあの人生でしょう。私自身、五〇を過ぎてから意識的にお返しをするよう心がけてきたつもりですが、特に我々昭和ひとケタ世代は、仕事仕事で、仕事を取ったらあとはボケるのを待つばかり…(笑)。現役のうちに自分なりの楽しみを見つけて、第一線を引退したら、その楽しみを中心に生きる。自分の楽しみだけじゃなくて、何らかの形で社会のお役に立つように心がけるという気持ちを持ちたいですね。
