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信用されているとは思えない。それだけに個人、自分の人生という意識は強いようですね。

守屋 孤独に強いというんですか。われわれ日本人にあの強さはないですね。この強さを身につけるのがこれからの私どもの課題でしょう。

堀田 阪神・淡路大震災の仮設住宅でも、孤独死が一五〇人を超えています。孤独死といっても餓死、半分自殺のようなものですが、どの層が一番多いかというと、五〇〜六〇代の男性なんですよ。今の日本では社会的に一番信用されている年代のはずなのに、一挙に生活基盤を壊されて、不安になって、それを仲間とのつながりの中で解消できないんですね。

守屋 『論語』の中に「和して同ぜず」という有名な言葉があります。しかるべき人物、つまり君子は「和」はするけれども、「同」はしない。「和」というのは自分をちゃんと持って、その上で周囲の人たちと仲良くする。「同」というのは自分を持たない、ただ、付和雷同するだけだという考え方ですね。日本の社会は聖徳太子の昔から「和」を非常に大事にしてきましたが、考えてみると、日本流の「和」は、ややもすると「同」になりがちですね。没個性で、金太郎飴みたいにべったり寄り合っている。これからの課題は本来の「和」、一人ひとりがちゃんと個性を持って、その上で協力関係を結ぶ。これをつくれるかどうかではないでしょうか。

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老驥(ろうき) 櫪(れき)に伏すも 志 千里に在り

烈士 暮年 壮心 巳(や)まず──曹操

 

堀田 日本は小学校時代から「同」ばかり教え込みますからねえ。私はいま文部省の教育課程審議会に入っていますが、「生きる力を生徒につけよう」などとやっている。いま頃そんな力をつけてやらなきゃいかん

 

 

 

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