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たった一〇万円で創った祭

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こうした状況の中、山田村でも「こうりゃく隊」が、学生と住民との交流を図るためのプログラムの作成と調整を着々と行っていく。

「外からやって来る若者たちが山田村に何を感じるのか。これからの山田村の観光を考えていく上で願ってもないサンプルになると思いました。また、普段交流の機会の少ない村民にとってもいい刺激になる」(小向さん)。

最終的に村は、積雪期に通学できなくなる山田小・中学校の生徒のための宿舎「桂寮」を無償貸与し、祭りの開催に必要な印刷などについては、役場の設備の一部を開放してくれることになった。一方、こうりゃく隊は七月二六日から八月四日までの祭り期間中、いも祭りやお百姓体験、星空鑑賞会、星空地酒パーティーなど、連日、多彩な催しを用意した。学生たちもお助け隊の活動のほか、講演会やワークショップ、親子凧(たこ)上げ大会などを企画し、地域との交流に努めた。山田村側の総予算はわずか一〇万円余り、後は住民の熱意と真心だ。

「準備はほとんど学生たちとメールでやりとりしたのですが、これが実に大変で、こんなに頭を使ったのは久しぶり(笑)。でも顔は知らなくても、どんな人がメールをくれたのかいろいろ想像を働かせるのは楽しかったし、年を忘れて若い人と意見のやりとりができるのも刺激的だった。考えてみれば、相手は家の娘や息子と同年輩で、ちょっと複雑でもありましたが。自分のことを一〇歳も若くサバを読んでましてね、後で学生たちに会ったときにバレて大笑いですよ」。あくまで明るい小向さんだ。

おもしろいことに小向さん宅では、商売上パソコンは一切使っていない。「パソコンは楽しい未来に連れて行ってくれる夢の道具。実務的なことには使いたくない」というのがその理由。一方、奥さんは地元主婦で作ったグループ、アップルプリンセスに所属し、ホームページを作成。夫婦ともども電子メールを楽しんでいる。

 

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アメリカからも高校生が参加

 

取材中、思わぬニュースが飛び込んできた。テレビで山田村のことを知ったというアメリカの高校生から、ボランティアの申し入れがあったのだ。夏休み期間中の三週間、地元の家庭にホームステイしながらパソコン指導に協力したいという。

大量の大学生の受け入れに一時は二の足を踏んだ村だったが、その経験も生かして、遠い国からたったひとりでやってくる高校生を快く受け入れた。方々手を尽くし、最初の一週間は、二人の子供を中国でホームステイさせた経験のある谷井さんが引き受けることに。「これもパソコンのおかげですね。これまで考えられなかったつながりから、いろんなふれあいが育っていることを実感しています」

 

 

 

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