ドーンと任せておけ!
ところで、今年三月のこと、倉田さんのところに奇妙な依頼が舞い込んできた。マスコミの報道により山田村のことを知って興味を持った学生から、"地域づくりとは何か""情報化は地域づくりに何をもたらすか"をテーマに、この夏、山田村で学生によるイベントを開きたい。ひいては参加する学生は村民の家に泊まり、パソコンの操作を教えるので、受け入れて欲しい、というものであった。題して「電脳村ふれあい祭'97」。しかし、いかんせん、予算も時間もない。
村としては大変ありがたいことだったが、すでに年度事業は予算化されており、また何十人訪れるかわからない学生のホームステイの受け入れも不可能という結論に達した。無になりそうなこの企画を実現に導いたのは、パソコンリーダーを中心とする「山田村こうりゃく隊」のメンバー三四名だった。学生たちの発案によるこの企画に賛同し、全面的な支援を申し出たのである。その中心的存在が、小向さんだ。
当初、五人だった学生たちはインターネットのメーリングリストでメンバーを募り、インターネット上で何度も企画を練った。学年生同士は一部を除いて全く面識がない。「山田村にパソコンを教えに行きませんか?」という呼びかけに応じた七〇余名は、祭りの当日、山田村で初めて全員が顔を合わせたが、すでにお互いメールで自己紹介済みとあって、旧知の間柄のようにすぐに親しくなった。
だが、おもしろい誤算もあった。当初はメールだけでやりとりしていたのが、期日が迫るに連れて、具体的な打ち合わせをするには、やはり顔を突き合わせるのが一番という結論に達したというのだ。学生たちは、ここにパソコンの可能性と限界を見たのである。
