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「とにかく我々は結果を急がず、過程を大事にしていこうと取り組みました。情報システムを構築することだけが目的であれば、業者に頼めば楽だし、簡単です。でも山田村に最も適したシステムを作るには、借り物ではだめなんです。また、役場として公正の原理に則すれば、パソコンを強制的にでも全戸配付すればいいでしょうが、わたしたちは住民の自発的な心の働きかけを持ちたいと思う。ただ必要なときにはいつでもそれができる環境だけは整えておこうと思いました」

 

おじさん、パソコンにハマる

 

そして昨年七月一六日、いよいよ山田村にパソコンがやってきた。住民は期待に胸を膨らませたが、この時点では、パソコンはただの箱に過ぎない。なにしろごくわずかしか操作できる人がいなかったのだから…。

この日から二ヶ月にわたって、村内のあちこちでパソコン講習会が開かれることになった。中にはパソコンがどんなものか知らず、「とりあえず、隣がもらうのならうちも」という人もいたくらいだから、まさにまったくのゼロからのスタート。

そんなてんやわんやの騒ぎの中、山田村在住の倉田勇雄さんの一通の電子メールが縁で、早稲田大学の大学院生がパソコン指導のボランティアを買って出たのである。倉田さんは情報を武器に全国市場のビジネスを展開する機械設計の会社を地元で経営。山田村の情報化事業を側面から支えてきた人物だ。

 

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「日本中の人とキーボドひとつで話しができるのが楽しい」と語る小向敏雄さん。

 

 

 

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