巻頭言 ●No.14●
公的介護保険と家事援助
● 堀田 力 さわやか福祉財団理事長
「ご隠居さん、今日はひとつ教えてくんなせえ」
「おや、八つぁん、こいつは驚きだねえ。やたらに殊勝じゃねえか。どうしたんだえ?」
「今度の公的介護保険の仕組みでさ」
「おったまげた。八つぁんが介護保険の勉強かえ」
「そんなこたぁ常識でさ。横町のオトメ婆さんだって勉強してますぜ」
「そりゃそうよなぁ、考えてみればみんなの暮らしの基本の問題だ。で、悩みは何かえ?」
「ホームヘルプというか家事援助というか、公的介護保険ができると、掃除とか洗濯とかそういう援助も保険でやってくれるんでがしょ?」
「やってくれる時もある。やってくれない時もある」
「それだよ、問題は。そんないい加減な話じゃあ、家事援助をやってるボランティア団体は、何をどこまでやったらいいのかわからんじゃないですか。公的介護保険でやってくれないところをやるなんて、そういうあいまいな話じゃあ団体のメンバーはやる気がしないっていってますぜ」
「そりゃよくわかるがな、八つぁん、ホームヘルプとか家事の援助って、そういうものだよ。人によって、食事はつくれないけどトイレは何とか自分でやれるとか、材料があれば食事はつくれるが買物はムリとか、やれること、やれないことが、てんでバラバラだろ?」
「じゃ、やれねぇことはみんなやってくれるんで?」
「それがそうともいい切れねぇ」
「エエィ、ジレッテェ。もう帰りまさ」
「ま、落ち着きな、八つぁん、ここが肝心なところだ。人によってバラバラだから、そこは介護認定審査会というのができて、これが、どの程度のサービスが必要か、決めるんだ。厚生省の案じゃ、六段階に分けて、一番軽い段階は、介護じゃなくて、家事の援助が中心だ。で、どれだけやるかは、額で決まってくることになってる」
「いくらなんで?」
「案では、一番軽い段階で六万円、一番重いのは、二九万円となっている」
「最初の段階じゃあ請け負った業者が月六万円でやれる範囲ってことか。で、それでやれるのはどれぐらい?」