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国際時間の標準であるUTCにもUTCブレストを通じて同期化しておりその精度は100ns以上である。TOE方式のコントロールのもとでは、そのサービス領域全体を通じて時間差(Tds)の変動が見られる。その原因は信号の伝播速度の一時的変化によるものであるが、これらの変化をコントロールしようという試みはまだない。しかしながら時間差の全体的な変動はTOEコントロールの方が伝統的なSAMコンセプトのもとでの変動よりも小さい。このシステムがSAMコンセプトより優れている一番大きな点はロランCとGNSSとが同一の参照時刻を持っているということであり、それ故に、GNSS/ロランCを統合したユーザー向け受信機の完成へと道を開く可能性があるということである。

このような統合受信機ができれば、それは両システムの長所を全面的に生かし、その結果、精度も利用可能性もインテグリティも冗長性も全て向上し、両システムがそれぞれ単独には発揮できない必要条件に合致することになるであろう。

 

NELSの技術シンポジウム

 

NELSの国際協定が1992年に調印されて以来、技術の面でも政治の点でも大きな展開が見られた。このうような展開に注目し、それに関係する個人や組織間の調整を計り、最新の状況を把握する必要性がNELSにおいても認識されるに至った。その結果1997年4月にオランダでこのような展開について討議する為の技術シンポジウムが開かれた。

この会合の成果をコピーしたものの一部が今ここにある。その中心となった技術専門家及び政治専門家からの強力な支持のおかげでシンポジウムは成功裡に終わった。このシンポジウムがきっかけとなってNELSシステムの今後に関する重要な決定を内容とするNELSの戦略文書について各国の合意が得られた。合意が得られた重要な点は次の通りである。

 

受信機開発計画

 

市場に適切な受信機が出回っておらず、販売に向けた努力もなされていない現状では、NELSが提供するサービスを利用しようというユーザーの数が限られているのも致し方ない。

受信機メーカーは、市場で強い競争力を持ち、GNSS/ロランC/Eurofixを完全に統合したユーザー向けの受信機の開発には二の足を踏む状況にあると思われる。その開発には大きな政治的リスクが伴うと考えられており、リスクの大きな原因となっているのは米国が国内のロランCの運用を2000年には止めてしまうと仄めかしていること及び、実際問題としてヨーロッパにおいて現在ロランCの運用を直接行っている国は数少ないということである。

このようなことを背景として、NELSの運営委員会では、ひとつの作業グループを作り、地上システムと衛星システムの両方を利用する低コストの受信機の開発を検討することとなった。この作業グループは英国のバンガー大学、オランダのデルフト工業大学及びドイツのブラウンシュバイクにあるAvionik Zentrumからの代表によって支えられている。

 

 

 

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