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2. 骨密度と閉経年齢、閉経後の経過年数の間には有意な相関関係がみられず、日常的な運動実施が骨密度の維持にポジティブに作用することが示唆された。

3. 立ち上がり運動に要した時間と等尺性脚筋力との間には有意な関係はみられず、等尺性筋力が動的場面に必ずしも結び付かないことが支持された。

4. 測定された骨塩量、骨密度と等尺性脚筋力、立ち上がり運動に要した時間の間には有意な関係はみられず、比較的容易に測定できる下肢筋群のパフォーマンスから骨密度を推定することの困難さが示唆された。

 

文献

1) 池上晴夫:中高年のスポーツ適性。Jpn. J. Sports Sci. 5:236-240, 1986.

2) 井本岳秋たち:女性の腰椎骨塩濃度と基礎体力。臨床スポーツ医学。10:701-706, 1993.

3) 串田一博、町田晃:骨の成長と老化。体育の科学。42:832-839, 1992.

4) 宮下充正たち:骨粗鬆症予防のための効果的連動療法の研究開発事業報告書。(社)日本エアロビクスフィットネス協会。東京。1992.

5) 百武衆一たち:骨粗鬆症の予防としての運動効果の縦断的研究。臨床スポーツ医学。11:1271-1277, 1994.

6) Nilsson, B. E. and Westlin,N.E.: Bone den-sity in athletes. Clin. Orthop. 77:179-182, 1971.

7) 岡野亮介たち:骨密度と筋力及び大腿骨骨幅との関係。体力科学。40:857, 1991.

8) 小沢治夫:スポーツ種目と骨密度。臨床スポーツ医学。11:1245-1251, 1994.

9) 沢井史穂:運動習慣と骨密度。体育の科学。42:851-856, 1992.

10) 佐藤哲也たち:運動と骨粗鬆症。医学のあゆみ。165:504-644, 1993.

11) 七五三木聡:骨の成長と運動。体育の科学。44:590-598, 1994.

12) 竹内正雄たち:中高年女性の生活習慣と骨密度の関係。運動とスポーツの科学。1:11-15, 1996.

13) 田畑 泉:運動実践の骨密度に及ぼす影響。Jpn. J. Sports Sci. 14:67-71, 1995.

14) 谷本廣道:骨粗鬆症と運動。体育の科学。42:840-845, 1992.

15) 山田保:連続立ち上がり運動のHealth-related physical fitness testとしての可能性の検討。体育科学。24:161-167, 1996.

16) 山村俊昭たち:中高年女性のランニングが骨・関節の退行変性に及ぼす影響。日本整形外科スポーツ医学会誌。11:287-292, 1992.

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3年間のまとめ

山田 保

 

加齢に伴って体力は低下するが、その変化は体力の要素によって必ずしも一様ではない。

筋力についてみれば、日常の行動力の基盤となる脚力は握力に比して加齢に伴う低下が著しい。そこで、簡単でいつでも自らの体力をチェックできる「健康に関連した体力テスト」として、座位からの連続立ち上がり運動を考案し、脚筋力、骨密度との関係について中高年女性を対象に検討した。

初年度である95年度においては、連続立ち上がり運動に要するタイムと等速性脚筋力との関係について検討した。その結果、50歳代の被験者群において連続立ち上がり運動に要したタイムと膝屈曲動作におけるピーク・トルクの間に有意に高い負の相関関係が得られた。

ついで96年度においては、連続立ち上がり運動に要するタイムと骨密度、等尺性脚筋力の関係を日常的に運動を実施していない被験者で、97年度においては日常的に運動を実施している被験者で検討を行った。その結果、加齢に伴い骨吸収が増加すること、骨の大きさの変化と密度の変化は異なることが明らかになったが、連続立ち上がり運動に要するタイムと骨密度との間には有意な関係はみられなかった。

「健康に関連した体力テスト」はもちろん正しい体力評価がなされなければならないが、テストそれ自体に楽しみや、トレーニングの要素が含まれることが望ましいと考える。このような視点から、日常生活にみられる単純な座位からの連続立ち上がり運動の有効性について検討を行ってきたが、下肢筋群の機能低下を知るための指標としての可能性を有することは示唆されたが、骨密度との関係を明らかにするまでには至らなかった。

 

 

 

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