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?V章 中高年の健康指標としての体力

 

体力調査専門委員会3年間(平成6年度〜8年度)の研究のまとめ

委員長 青木純一郎

 

日常生活の機械化が招いた運動不足が誘因の成人病が問題となる昨今、運動能力としてではなく健康を支える基盤としての体力の持つ意味が重要である。

本委員会ではこの点を共通理解として、運動不足によって低下しそのことが健康障害の引き金となる危険性の高いことが示唆されている全身持久力、筋力/筋持久力および柔軟性について、7班がそのいずれかを指標にして健康との関わりおよび測定法の検討を行った。

今回はその3年次の研究内容の概略および3年間の成果を要約した。

 

全身持久力

今年度は全身持久力それ自体に直接焦点を当てた研究はなく、下肢筋力との関連(田村班)および健康関連体力要素の1つとしての健康との関連(形本班、鈴木班)として、それぞれ別項で検討されている。

 

筋力/筋持久力

これまで全身持久力を調査対象としてきた加賀谷班は、今回筋持久力に焦点を当て、20〜60歳の男性134名を対象に、毎分20回のテンポの上体起こし、腹部(腹直筋)および皮下脂肪の厚さを測定した。その結果、中年男性においては、筋組織が厚くなるほどまた皮下脂肪が薄くなるほど、上体起こしの成績が良くなることが明らかになり、さらに加齢による差には皮下脂肪厚が有意な負の影響を与えることが示唆された。

田村班は一般成人(男性432名;女性739名)を対象に、脚伸展パワーおよび膝の伸展、屈曲のピークトルクおよび最大酸素摂取量を測定し、それらの横断的加齢変化を示すと共に、それらの相互関連を検討した。その結果、体重当たりの膝伸展筋力と最大酸素摂取量との間には有意な正の相関があること、また体力水準が高い者は筋力や持久力にも優れていることが明らかにされた。

単純な立ち上がり動作が脚力を評価する指標になる可能性を示唆した山田班は、日頃スポーツ活動を行っている38名の中高年女性(50〜66歳)を対象に、骨密度、等尺性脚筋力および連続立ち上がり運動を測定した。今回もこれまでと同様に、加齢にともなう骨吸収の増加、骨の大きさの変化と密度の変化が異なることなどを明らかにしたが、連続立ち上がりに要した時間と骨密度との間には有意な関係を見いだすことは出来なかった。

 

 

 

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