のt検定では、危険率5%をもって有意と判定した。
研究結果
1) 等尺健最大筋力:ヘッドレスト前後の膝伸展筋力の変化を表1に示した。トレーニングを行った右脚は、平均で82Nmから210Nmへと有意に増加した。しかし、トレーニングを行わなかった左脚は、これまでのヘッドレスト研究と異なり、有意に低下するということはなかった。
2) 跳躍高:跳躍高の変化を表2に示した。両脚跳躍とトレーニングを行わなかった左脚跳躍の跳躍高は、ヘッドレストで有意に低下した。ただし、トレーニングを行った右脚跳躍の跳躍高は減少傾向がみられるものの、有意な低下ではなかった。
3) 下肢関節のパワー曲線:踏切中の下肢3関節のパワー曲線の典型例を図1に示した。発揮パワーのピーク値は、各跳躍の3関節すべてにおいて、ヘッドレスト前よりもヘッドレスト後の方が減少していた。また、ヘッドレスト後の方がパワーの発揮時間が延長(ヘッドレスト後の方が始動から離地までの動作時間が長い)するという傾向がみられ、それは特に股関節で顕著であった。
4) 下肢調節トルク・パワー・仕事量:各跳躍における関節ごとのピークトルク、ピークパワー、仕事量の平均値と標準偏差を表3に示した。ピークトルクについては、各跳躍のいずれの関節においても有意にヘッドレスト後に減少するということはなかった。ピークパワーでは、膝・足関節においてヘッドレスト後に減少傾向がみられ、両脚跳躍と左脚跳躍の足関節において有意な減少が認められた。また、片足跳躍の股関節のピークパワーは、有意ではないがヘッドレスト後に若干増加する傾向がみられた。仕事量では、ピークパワーと同様の傾向、つまり膝・足関節においてヘッドレスト後に減少傾向がみられ、また片足跳躍の股関節のピークパワーは、有意ではないが若干増加する傾向がみられたのである。片脚跳躍のそれぞれの足関節においてはヘッドレスト後に有意な減少が認められた、しかし、右脚の膝伸展のみトレーニングを行い、膝伸展筋力がヘッドレスト後に有意に増加していたにも関わらず、垂直跳中の膝関節出力がヘッドレスト後に増大するということはなかった。
議論
これまで、筋量や筋横断面積は、長期間のヘッドレストによって減少し2,13,14,16)、その結果筋力や発揮パワーが減少する11,16)ことが報告されている。ただし、身体全体の不活動による筋萎縮はすべての骨格筋に均等ではなく11)、不活動によって大きく萎縮する筋とそれほど萎縮しない筋とがある。本研究の仮説は、「自由な身体運動では、不活動によって極端に萎縮した筋を、それほど萎縮していない筋が補償あるいは調整するのではないか」ということである。この仮説を検証するためには、測定機器に体肢を固定した単関節運動ではなく、自由な身体運動を対象に、なおかつ個々の筋(あるいは関節)の活動状態が推定できる方法でなくてはならない。そこで本研究では、自由な身体運動として最もダイナミックな「垂直跳」を選択した。垂直跳で発揮される瞬時最大パワー3,4)は、身体重心に関して絶対値で3500W、体重あたりの