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文献

1) Dawn, I., Cockell et. al. : A preliminary analysis of the coordination of reaching, grasping and walking., Perseption and Motor Skills, Vol. 81:515-519, 1995.

2) 金子分有:高齢者の歩行運動、Jap.J.Sports Sciences,10(11):729-733, 1991.

3) 渡部和彦他:高齢者の歩行調整機能に関する研究。トレッドミル上での着地局面における足部の姿勢に着目して、体育科学20:104-109, 1992。

4) 渡部和彦、塩川満久:高齢者の階段降り歩行の3次元動作解析およびその特徴、体育科学24:130-136, 1996.

5) 渡部和彦、田村恵司:障害物を踏み越える歩行における認知特性−アイカメラによる分析の試み−、体育科学25:120-128, 1997.

 

3年間のまとめ

渡部 和彦

 

高齢者の日常生活において、歩行運動は重要な位置を占める。しかしながら、高齢者のための安全な環境条件が用意されているとは言いがたい。この研究の目的は、高齢者の歩行運動の特徴を明らかにすることで、高齢者の特質を理解したうえで、高齢者のための安全な歩行運動環境条件を考える基礎資料を得ることである。

障害物を回避したりまたはまたぎ越したり、さらには階段の昇り降りには、視覚情報の関与が大きい。視覚情報と歩行運動の関係は、その研究結果は極めて少ないのが現状である。本研究では、アイカメラを用いて、高齢者が実際にJR駅の階段を降りるという条件を設定し、ようやく研究資料を得るまでに至った。

すなわち、初年度(1996)は、階段歩行をできるだけ正確に分析する方法として3次元動作解析を試みた。次年度(1997)には、アイカメラのシステムが本研究に応用できることを確認した。本年度(1998)は、アイカメラを用いて実際の場面での解析に応用し、高齢者の視覚情報処理の特徴と歩行運動の特徴をある程度まで明らかにできた。今後は、さらに多様な体力レベルや生活習慣の異なる高齢者の特徴を解析する予定である。

 

1. 高齢者の階段降り歩行の3次元動作解析およびその特徴(1996年)

高齢者の日常生活における安全な環境条件を考えるための基礎資料を得る目的で、高齢者が階段を降りる際にどのような特徴を示すかを動作解析の面から調べた。実験室に特製の階段を作成し高齢者の歩行動作の特徴を3次元画像解析した。高齢者の特徴を明らかにするために、学生の協力をえて、階段を降りる歩行動作を行ってもらい比較検討した。高齢者は、61歳〜81歳までの女性5名に協力していただき、学生は女子2名である。歩行速度は、「普通の速さ」と、「やや速く」の条件とした。

その結果、以下のことが明らかとなった。

1) 高齢者は、「普通の速さ」では、学生よりも若干速いほどの歩行速度を示したが、「やや速く」では、明らかに学生の方が速かった。速度の増加の割合は、高齢者が20%であったのに対し、学生は、73%であった。高齢者の予備能力の欠如を示すものである。

2) バランス機能が現れるかと考え体幹部の前後動揺を比較したが、有意な差は認められなかった。しかし、高齢者では、「やや速く」の条件では、大腿部の引き上げが大きくなることが示された。

3) 高齢者には、高齢者独自の階段のおり方の戦略があると思われた。

 

2. 障害物を踏み越える歩行における認知特性−アイカメラによる分析の試み−(1997年)

高齢者が階段や障害物をまたぎ越したり、避けて通る際には、視覚情報が重要である。しかしな

 

 

 

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