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図5は、累積停留時間の頻度を停留時間別にグラフ化して示したものである。横軸は、停留時間を示し、縦軸は頻度を示している。この結果を見ると、0.25秒以下では、高齢者が44、若者は47であり、0.50秒以下では高齢者が17、若者が8であった。0.75秒未満では、高齢者が2、若者は0である。1秒以上では、高齢者が3、若者が0であった。すなわち、特徴的であったのは、0.75秒以上の停留は若者では観察されなかったことである。

この結果は、高齢者が一点を集中して見ていると理解することができ、高齢者の眼球運動の特徴をよく示していると考えられる。

 

要約

高齢者の階段降り歩行運動を解析し高齢者の特徴を理解しようとする研究課題に対して、実際にアイカメラを装着し測定した。階段にはさまざまな種類や場所があるが、普段よく利用する一般的な場所を選んだ。すなわち、公共交通施設として、一般によく利用されるJRの駅の階段を利用して実験を行った。また、高齢者の眼球運動の特徴を理解するために、比較対象として学生を用いて同様の実験を行った。高齢者の被検者として、実験に参加したのは、東広島市在住の高齢者5名である(年齢は、68.6±1.7歳)、学生は5名(年齢は、22.4±0.9歳)であった。

 

まとめ

1) 駅の階段隣りの歩行速度は、高齢者が、0.55±0.09m/s、学生は0.68±0.05m/sであった。

2) 学生と比較して、高齢者において眼球運動の移動範囲、移動距離ともに小さいことが得られた。すなわち、高齢者の特徴としては、比較的狭い視野の範囲で階段を降りているという特徴が示された(高齢者:2215cm2、学生:3948cm2)。

3) 眼球停留時間は、高齢者は、学生に比較し長い傾向を示した。学生では、0.75秒以上の累積の停留時間は認められなかった。つまり、高齢者は、学生に比較して一点を注視している時間が比較的に長いということを意味するものと理解した。

4) 歩行中に連続釣にアイカメラを使用すると、カメラの位置が微妙にずれることがあった。頻繁にキャリブレーションをすることにより適正な状態にした。このような補正を行えば定量的な解析に利用できることが分かった。

 

 

 

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