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であり、立位での前・後屈度は体操後で大きくなったが、長座体前屈では変化がなかった。中年者、高齢者において、立位体前屈と長座体前屈とでは変化した人数にあまり違いはなく、後屈も前屈と同様であった。中年者では10〜12名(67〜80%)高齢者では9〜11名(61〜73%)の対象者において体操後での前・後屈度が大きくなった。中・高年者のほうが若年者よりも変化が大きいことより軽体操の前・後屈姿勢に及ぼす効果は中・高年者にあらわれやすいとも考えられる。

どの年代についても、長座体前屈での体操前後の変化がない例の中には、柔軟性が高く、胸・腹部が脚に接してふたつ折りになっている場合があった。写真7(若年者)についてもそうであった。立位体前屈や長座体前屈の前屈度が体操後に大きくなっている例については、脊柱の丸まり具合よりも股関節の屈曲角度が変化している様子がみられた。森下ら8)の報告で、立位体前屈についてその前屈度をひとつの角で計測した値と頸部、胸部、腰部、股関節に分けて計測した値の関係をみた際に、ひとつの角で計測した前屈度は股関節の屈曲角度と最も相関が高かった(r=0.67, p<0.001)とされている。今回の調査においても個人内、個人間ともに前屈度の大小は股関節屈曲角度によるものが大きいと考えられた。写真7(若年者)は柔軟性のある例、写真8(中年者)は柔軟性のない例、写真9(高齢著)はその間の例であるが、写真7の長座体前屈を除くすべての前屈で股関節屈曲角度が変化していた。中でも長座体前屈については、長座位の「意識姿勢」でみられたように、体操後に上後腸骨棘の位置が高くなっており、骨盤角度つまり股関節の屈曲角度の変化があらわれていた。

後屈度について、森下ら8)の報告では前述の前屈度での結果とは異なり、ひとつの角で計測した立位での後屈度は股関節の伸展角度ではなく腰椎の伸展角度との相関が高かった(r=0.38, p<0.001)。そして股関節の伸展角度は小さく、逆に屈曲している場合もあった。今回の結果においても、股関節の伸展角度は腰椎の伸展角度よりも小さかった。体操後に後屈度が増す場合には腰椎の伸展角度の増加とあわせて、股関節の伸展角度も大きくなった。写真10は後屈度の異なる中年者2名の例であるが、体操前は股関節には両者ともあまり伸展がみられなかった。体操後は後屈度の大小に関わらず、腰椎と股関節ともに変化があった。立位での後屈ではバランスを保つことが必要であるが、この軽体操により体幹を支持するための筋の使い方が分かったことによって、バランスを崩さないで静止していられる後屈度の範囲が大きく

 

 

 

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