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とされている。

姿勢の分類については、同様に脊柱彎曲測定装置を用いて、山口ら18)が17〜28歳の健康成人1082名(男526名、女556名)についての測定をおこない、頸椎前彎角度、胸椎後彎角度、腰椎前彎角度の大小を基準に、体幹姿勢を27種類に分類している。Staffel(姿勢研究所12)、山口ら18)より引用)は側方から見た脊柱の彎曲度により正常姿勢、平背、凹背、円背、凸円背の5つに分類している。Wiles(姿勢研究所工12)、山口ら18)より引用)の場合は、脊柱の形態と骨盤の傾斜の組み合わせによる分類で、nomal type, lordosis type, flat back type, sway back type, round back I type, roundback ?U typeの6種類としている。唐津ら4)は側方から見た姿勢を正常、前倒、前屈、後倒、後屈、腰入、腰入前屈、尻出他の8種類に分類している。

加齢変化や分類法の他にも、その計測法についても様々な報告がされている9)X線撮影、人体姿勢計測装置(脊柱彎曲測定装置)、簡易彎曲計(簡易姿勢計Sliding gauge 法)、シルエッター(自動体型撮影器)、モアレ・トポグラフィー計測法などが用いられている。

運動が姿勢に与える影響については、スポーツ選手は種目によって姿勢が異なるとの報告1)や、女子学生について運動群と非運動群での姿勢に違いがあるとの報告6)があり、これらは何らかの運動をある程度の期間継続した際の姿勢の違いをみた研究である。姿勢には、運動習慣だけでなく、性、年齢、体格などの器質的要因、生活習慣、さらに社会的・文化的要因などが複合的に影響している。たとえば、休息姿勢や作業姿勢に地域差や性差があることはHewes2)をはじめ多くの報告がある。

姿勢の分類評価にも機能解剖学や身体効率上の意味付けだけでなく、「美しい」とか「姿がよい」といった見た目の評価もあり、この評価尺度には社会的・文化的要因が反映している。森下7)は、ダンスと伝統的舞踊の構え姿勢では、「腹」の凹凸が全く異なることを報告し、田中15)は「腹」を重視する東洋的・伝統的・民間的健康法に対し、「胸」を重視する西洋的・近代的・体制的健康法が近代日本の健康法のキーワードになったとのべている。この観点は腹部の突出をよくないとする姿勢評価にそのまま反映している。そして、Willgoose17)が報告しているNew York State Physical Fitness Testの姿勢判定表によっても腹部が出ている姿勢はよくないとされている。また、背中が丸いことに関しては、山口19)は脊柱を長時間丸めていることが椎間板の変性の原因となるとしており、これもよくない姿勢と評価されている。

こういったよくない姿勢の矯正や調整には、外科的手術を必要とする段階から習慣的姿勢の意識的調整までさまざまな段階があるが、この意識的調整においては、どのような姿勢をとろうとするか、自分の思っているとおりの姿勢ができているかどうか、といった身体意識のレベルによって姿勢が異なると思われる。特に、座姿勢は直立姿勢と比較して多様であり、意識のもち方によってその姿勢は大きく違ってくる。座位の椎間板内圧は立位よりも高く19)、1日のうちで座っている時間は長いので、どのような脊柱形状で座っているかということは腰痛の有無などにも関わってくるだろう。同じ姿勢を長時間続けることは望ましくないので、姿勢には可変性があるほうがよいと考えられる。椅座や正座では多くの場合、意識すれば背すじを伸ばすこともできるが、伸びにくい座り方もあり、長座では背すじを伸ばそうとしても伸びない場合もある。そこで今回は特に脊柱形状や骨盤角度が直立姿勢と異なる長座姿勢に注目したいと考えた。

本研究の目的は、日本人成人女性が「よいと思う姿勢」は「リラックス姿勢(普段の姿勢)」とどのように違うのか、そして1回の軽体操でそれらの姿勢はどのような影響を受けるのかをみることであり、その軽体操は日常的におこなえる簡単なものであることが重要だと考えた、方法としては、成人女性の上体のアラインメントについて胸・腹部と背・腰部を別々に観察し、その型により大まかな分類をおこない、若年者、中年者、高齢者における立位姿勢、長座姿勢の特徴をみた。そして、簡単な体操による姿勢矯正の可能性を探るため、1回だけの軽体操前後でのアラインメントの比較

 

 

 

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