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接床期(ST)の間、足関節筋の前脛骨筋と腓腹筋では、歩行習得2週頃(図3)と同傾向を示した。すなわち、両筋の2〜3峰性のburstが交互に交代する相反パターンはみられず、また両筋の同時放電パターンも少なくなる傾向を示した6,9,14)。膝関節筋の内側広筋では、歩行習得2週頃に比し、持続放電が減少・消失するパターンがさらに多くなった5,6,9)。膝・股関節筋の大腿直筋と大腿二頭筋では、歩行習得2週頃と比べると、大腿二頭筋に放電がみられ、大腿直筋の放電が減少・消失する相反パターンがさらに増大した6,9)。一方、両筋の逆相反パターンと同時放電パターンは、歩行習得2週頃に比べると、さらに減少・消失した6,9)

離床期(SW)後半、歩行習得2週頃と比べると、足底屈に働く腓腹筋と膝伸展に働く内側広筋の両筋に強い放電様相が少なくなり始めた5〜9,11,12,14)

 

4. 歩行習得2〜3ヵ月頃

接床期の間、足関節筋の前脛骨筋と腓腹筋では歩行習得1ヵ月頃(図4)と比べると、両筋の同時放電パターンは非常に少なくなった6,9,14)。膝・股関節筋の内側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋の放電様相は、歩行習得1ヵ月頃とほぼ同傾向を示した。すなわち、内側広筋は着地直後ほとんど放電はみられず大腿二頭筋に放電がみられ、大腿直筋にはほとんど放電のみられない相反パターンが多く認められた5,6,9)

離床期(SW)後半では、歩行習得1ヵ月頃と比べると、足底屈に働く腓腹筋と膝伸展に働く内側広筋の両筋に強い放電様相が非常に少なくなってきた5〜9,11,12,14)

 

考察

1. 立位からの第1歩

立位バランスが確立されると独立歩行が可能になるが17)、歩行獲得瞬間の筋活動パターンは明らかではない。本研究の第1歩踏みだし前のstandingの筋電図パターンをみると、push off前では、成人の立位6)でみられない下肢筋活動が認められた。膝・股関節筋では一関節筋である膝伸展筋の内側広筋には強い放電がみられ、膝・股関節筋の二関節筋である大腿直筋と拮抗筋の大腿二頭筋には弱い同時放電が認められた。これらの放電様相は、立位の筋電図的解析結果6)より、中腰体直立位を示しているものと考えられる。次にpush off寸前では、内側広筋の放電様相はstandingと変わりないが、大腿直筋と大腿二頭筋の放電様相に変化がみられた。すなわち、大腿直筋の放電が減少し大腿二頭筋の放電が増大する傾向を示し、中腰体前傾位がとられたものと解釈される6)。その後push offに働く腓腹筋に強い放電がみられるが、膝伸展に働く内側広筋の放電が減少・消失し、大腿二頭筋の放電がさらに増大し、大腿直筋の放電が消失した。これは、膝のゴニオグラムから膝は伸展しているが、膝伸展筋の内側広筋が強く働かないことは立位時に比し膝関節に大きな負荷がかかっていないことを示唆している。また離床前の抗重力筋である腓腹筋、大腿二頭筋、大殿筋の強い同時放電は体前傾姿勢がとられていることを示している6)

離床時では股関節屈曲に働く大腿直筋にごく弱い放電と、足背屈に働く前脛骨筋に強いburstがみられ、中腰体前傾姿勢から大腿を挙上し、同時に足背屈しながら離床していることを示している。この筋電図パターンは幼児・成人型歩行と基本的には類似した1,5,6,8,9,12)。その後離床期中頃から着地にかけて、足底屈筋の腓腹筋と膝伸展筋の内側広筋に放電がみられ、幼児・成人型歩行ではみられないパターンが認められた。この両筋の放電様相は転倒前(図1 SW-2)に強くなることから、McGraw4)も指摘しているように、転倒を防ぐため早いrunning stepがとられたものと思われる。この時期は片脚立位が瞬間しか出来ない時であり、転倒を防ぎ早く着地するため足底屈・膝伸展動作、すなわち自己防御反射としての下肢のパラシュート反応パターンがみられたものと推測される5〜9,11,12,14〜16)

要するに、独立歩行開始期における立位からの第1歩は、中腰体直立位姿勢から中腰体前傾姿勢に変化し、離床期前半の脚屈曲動作に次いで、離床期中頃から着地にかけて積極的な足底屈・膝伸展動作がなされ、最初の第1歩が遂行されている

 

 

 

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