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保持の筋電図パターンは、足関節筋の前脛骨筋を除く他の下肢筋に放電がみられた。push off寸前では、二関節筋の大腿直筋(膝伸展・股関節屈曲)と大腿二頭筋(膝屈曲・股関節伸展)の放電様相に変化がみられた、すなわち、大腿直筋の放電が減少し、拮抗筋の大腿二頭筋の放電が増大する傾向がみられた。その後push off時では、腓腹筋と大腿二頭筋に放電の増大がみられ、内側広筋の放電は減少し、大腿直筋の放電は消失した。次いで離床時には足背屈に働く前脛骨筋に強いburst、股関節屈曲に働く大腿直筋にごく弱い放電がみられ、基本的には幼児・成人型歩行と類似した筋電図パターンを示した1,5〜7,9,14)。離床期中頃から着地にかけて、足底屈に働く腓腹筋、膝の伸展に働く内側広筋に放電がみられた。特に転倒前のステップである離床期後半(SW-2)では、腓腹筋と内側広筋の両筋に強い放電がみられた5〜9,11,12,14〜16)

図(中)に示す歩行中の接床期(ST-1)の着地直後からpush off(接床期後半に腓腹筋に強い放電がみられる頃)の間、足関節筋の前脛骨筋と拮抗筋である腓腹筋に2峰性の強い集中した放電(burst)がみられ、両筋のburstが交互に交代する相反パターンが認められた。膝関節筋の内側広筋は着地直後からpush offに至る間、強い持続放電がみられた5,6,9)。膝・股関節筋の大腿直筋と大腿二頭筋では、大腿二頭筋に放電がみられ大腿直筋の放電が減少・消失する相反パターンと、両筋に放電のみられる同時放電パターン、大腿直筋に放電がみられ大腿二頭筋の放電が減少・消失する逆相反パターンの3つのタイプが認められた。

図(右)の転倒前の両足立位保持(ST-2)の間、足関節筋の前脛骨筋と腓腹筋の放電様相は両筋のburstが交互に交代する相反パターンがみられた。膝関節筋の一関節筋である内側広筋、ならびに膝・股関節筋の二関節筋である大腿直筋と大腿二頭筋には強い同時放電がみられた6,9)

 

2) 連続9歩成功

図2は独立歩行習得1日目で、9歩連続して歩けたときの代表的な筋電図である。

接床期(ST)の間、足関節筋の前脛骨筋と腓腹筋では3峰性以上のburstがみられ、両筋のburstが交互に交代する相反パターンを示した。また、前脛骨筋と腓腹筋の両筋に強い同時放電パターンも認められた6,9)。膝関節筋の内側広筋では、着地直後からpush offの間、強い持続放電が多くみられた5,6,9)。膝・股関節筋の大腿直筋と大腿二頭筋では、9歩連続した歩行中、大腿二頭筋に放電がみられ大腿直筋の放電が減少・消失する相反パターンが多く認められた(図右)6,9)。一方、大腿直筋に強い放電がみられ大腿二頭筋の放電が減少・消失する逆相反パターンと、両筋に強い放電がみられる同時放電パターンも認められた。

離床期(SW)後半では、図1の転倒前の離床期(SW-2)後半と同様、足底屈に働く腓腹筋と膝伸展に働く内側広筋の両筋に強い放電様相が多くみられた5〜9,11,12,14〜16)

 

2. 歩行習得2週頃(生後318日目)

図3は、独立歩行習得2週頃で、20歩以上連続して歩けるようになったときの代表的な筋電図である。

接床期(ST)の問、足関節筋の前脛骨筋と腓腹筋では、歩行習得1日目(図1,2)にみられた両筋の2〜3峰性のburstが交互に交代する相反パターンが減少・消失し始めた。また、前脛骨筋と腓腹筋の両筋に放電のみられる同時放電パターンも同様に減少・消失し始めた6,9,14)。一方、前脛骨筋に放電がみられず腓腹筋に放電のみられる相反パターンが増大し始めた。膝関節筋の内側広筋では、歩行習得1日目に比し、持続放電が減少・消失し始めた5,6,9)。膝・股関節筋の大腿直筋と大腿二頭筋では、歩行習得1日目と比べると、大腿二頭筋に放電がみられ大腿直筋の放電が減少・消失する相反パターンがさらに増大した6,9)。一方、大腿直筋に強い放電がみられ大腿二頭筋の放電が減少・消失する逆相反パターンと、両筋の同時放電パターンも減少・消失し始めた6,9)

離床期(SW)後半、歩行習得1日目と比べると、足底屈に働く腓腹筋と膝伸展に働く内側広筋の両筋に強い放電様相が多く認められた5〜9,11,12,14)

 

3. 歩行習得1ヵ月頃(生後335日目)図4は、独立歩行習得1ヵ月で、かなり長く歩けるようになったときの代表的な筋電図である。

 

 

 

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