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てビデオに収録したところ、その中に非支持期(両足が同時に宙に浮く)のある「初めての走運動」が含まれていた。この‘原始走行’とでも言うべき走運動では、歩行より明らかにスピードが速く、接地時間が短く、そして歩数(ピッチ)が多かった。しかし歩幅や動作パターンには大きな違いがないことから、非支持期の出現は歩幅(ストライド)の増加に因るのでなく、鉛直地面反力の増加によるものと考えられた。また背面からの動作分析では、幼児期の走運動では腕や足を大きく外側に振るという幼児特有の動作が浮き彫りにされた。幼小児の垂直跳動作の発達も宮丸班で研究され、発育が進むにつれて膝を深く曲げたり、キック時に腕を振り込んだり、空宙で頭や背を反らしながら腕をしっかり伸ばすといった力強い跳躍動作の生まれる過程が明らかにされた。

動作調整能を幼児から高年までの広いライフスパンでみようとした森下班の研究では、動的な姿勢調節や体幹部の柔軟性が取り上げられた。動的な姿勢調節機能は「両足で跳び上がり、身体長軸まわりにクルッと回転して再び正面に向き直る」という一種のダイナミックバランステストで調べた。この運動をうまく行うこつは、跳びあがるのと同時に頭(頸)を回転方向に捻るところにあるが、それが4歳頃からできはじめて10歳頃までに急速に発達することがわかった。森下班ではまた、0〜75歳の多数の人々について脊柱の屈曲・伸展度も調査し、立位からの体前屈と後屈における姿勢パターンを分類した。その結果、幼児は関節が柔らかい代わりに抗重力筋が未発達だが、成熟後はその逆になるといった年齢による変化が明らかになった。さらに体幹姿勢に及ぼす軽体操の効果を確かめるとともに、それが身体意識にも好ましい影響を及ぼすと報告した。

 

2. 加齢に伴う調整力の退行(老化)

人口の高齢化とともに高齢者の福祉や介護のあり方が問題となっているが、その中には高齢者に多発する骨粗しょう症、転倒事故などによる骨折、そして「寝たきり」の問題が潜んでいる、高齢者の転倒を予防するには、高齢者をとりまく環境の整備もさることながら、高齢者自身が足腰を鍛え、バランス能力を維持することが大切である。

高齢者のバランス機能に着目した木村班の研究では、安全かつ簡便に平衡性を評価する開眼または開眼による「片脚立ちテスト」を多数の高齢者に適用した。その結果、閉眼片足立ちでは大多数が「異常」と判定されたことから、60歳代以上の高齢者には開眼片足立

 

 

 

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