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ということができる。

運動部活動への所属の経緯からみると、中学・高校ともに運動部に所属していた者、高校のみ運動部に所属していた者が、現在の組織的なスポーツ活動により多く参加しており、また、体育会所属の割合も大きかった。このことから、中学から高校まで運動部活動に所属していることばかりでなく、高校のみでの運動部活動の経験もその後の組織的なスポーツ活動に積極的な影響を与えていると考えることができる。これを、将来のスポーツ参加の観点からは高校での運動部活動の経験がとりわけ重要であると要約することも可能であるが、次のような条件を考慮して慎重に解釈する必要があろう。?@今回の調査で、高校のみで運動部に所属していた者は、ごく少数(40名)であった。?A中学での運動部所属者のうちには、クラブ活動代替としての参加者が含まれており、運動部活動所属者の全員が本来的な意味での主体的な参加者であるとは言い切れない。?B中学での運動部活動は、高校での運動部活動への参加を促進する機能をもっていると考えることができる。

 

2. 中学校の運動部活動への意識と現在のスポーツ参加状況

桂・中込6)は、運動部活動における適応感を規定する要因を明らかにすることを目的とし、中学、高校の運動部員を対象に精密な研究を行い、運動部活動への適応感に貢献する要因として5つの因子を報告しているが、本研究で抽出された5因子はこれと次のような関連もしくは対応関係を有するものと考えられる。本研究の指導者の効果性と桂・中込の部の指導者・運営、社会・心理的側面での充実感と対チームメイト感情並びに種目・部へのコミットメント、技能や能力面での充実感と部内における自己有能感がそれである。また、本研究の部(チーム)への満足感は、SPTT(Sport Psychological Test for Teams, 猪俣他8))の下位尺度でありスポーツマンのやる気と関わりが深いとされているチーム有能感と関連するものである。したがって、本研究における上述の4因子は運動部活動への積極的な意識につながるものとみることができる。

これらの因子と関連の大きい項目の平均値と現在のスポーツ参加状況との分析から、次のような要約を行うことができる。現在体育会に所属する者では、組織的なスポーツ活動に参加していない者より、指導者の効果性、社会・心理的側面での充実感、技能や能力の側面での充実感、部(チーム)への満足感の面で肯定的で高い意識を持っている。体育会に所属する者は、サークルに所属する者より技能や能力の側面での充実感が大きい。サークルに所属する者は、組織的なスポーツ活動に参加していない者より社会・心理的側面での充実感が大きい。体育会とサークルとを含めた組織的なスポーツ活動に参加する者では、組織的なスポーツ活動に参加していない者より、社会・心理的側面での充実感が大きい。

また、第4因子の活動の主体性は、「生きる力」の育成を基本とするこれからの教育の方向からみて大切な内容であるとの判断から、前回の研究から注目している因子であるが、前回と同様に因子の1つとしては抽出されたが、現在のスポーツ参加状況との関連を見いだすことはできなかった。これを素直に解釈すれば活動の主体性はスポーツ参加状況と関連をもたなかったということになるが、長島9)が最近の中学生の主体性のなさを指摘していること、本研究の結果でも主体性に関わる項目得点の平均値が著しく低いことなどから、中学校の運動部活動が、参加する者が主体性という意識を持ちにくい形で運営されているのではないかという推測も可能である。

 

3. 中学校の運動部指導者の効果性・開放性と現在のスポーツ参加状況

過去の運動部活動の指導者への意識と現在のスポーツ参加状況との関連を、効果性と開放性との観点からみると、効果性では、体育会に所属する者の得点が、組織的なスポーツ活動に参加していない者よりも有意に大きく、開放性では、得点の大きさは、体育会、サークル、不参加の順であり、全ての組み合わせで有意差がみられた。このことから運動部指導者への意識では、指導者が運動部の有能な指導者であるか否かばかりでなく、いかに心を開いた指導者であるかが現在のスポーツ参

 

 

 

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