日本財団 図書館


gastrocnemius area. J. Appl. Physiol. 63 : 2343-2347, 1987.

2) Chance, B. et al.:Recovery from exercise-induced desaturation in the quadriceps mus-cle of elite competitive rowers. Am. J. Physiol. 262 : 766-775, 1992.

3) Eriksson, B. O. et al.:Muscle metabolites during exercise in pubertal boys. Acta Peadiatr. Scand. 217 : 154-157, 1971.

4) Eriksson, B. O. et al.:Muscle metabolism and enzyme activity after training in boys 11-13 years old. Acta Physiol. Scand. 87 : 485-487, 1973.

5) Kuno, S. et al.:Muscle metabolism during exercise using phosphorus-31 nuclear mag-netic resonance spectroscopy in adolescents. Eur. J. Appl. Physiol. 70 : 301-304, 1995.

6) 久野譜也たち:中学・高校運動部員の筋酸素動態に関する研究-その1-体育科学。25:21-26.1997.

7) Shiga, T. et al.:Development of portable tissue oximeter using near infra-red spectros-copy. Med. Biol. Eng. Comput. 33 : 622-626, 1995.

 

3年間のまとめ

久野 譜也

 

子どもにおける筋の特徴の1つとして解糖系能力が成人に比べて低いことおよび酸化的能力はすでにほぼ成人と同等の能力に達していることが知られている。一方、トレーニングを実施すると、子どもの解糖系能力は成人並に達することも明らかにされている。このような特徴を持つ発育期の子どもにおいて、スプリント中の筋の酸素動態がどのような状態にあるのかについては、我々の知る限り誰も検討していない。さらに、日頃の運動量、すなわち運動部への加入の有無との関係は全く不明である。近年、光分光装置のめざましい発達により筋の酸素動態を非観血的に測定することが可能となってきた。さらに最近、フィールドでの測定が可能となる携帯型装置も開発されている、

そこで本プロジェクトでは、短距離走実施中の筋の酸素摂取能力がどの様になっているのか?また発育期のステージの違いおよび運動部加入の有無による日頃の活動量の違いが、その能力にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることを目的とした。

本研究の主要な知見は、以下に示した。

1) 疾走時間が良い者ほど筋内の酸素濃度が低い傾向を示した。この傾向は1本目と5本目を比較した場合、5本目においてより顕著であった(1本目r=-0.471, p<0.05, 5本目r=-0.652, p<0.01)。この結果は、速く走れる者ほど、筋内がより低酸素になっていることを示唆している。

2) 筋肉がより低酸素状態を示した者ほどより高い血中乳酸濃度を示していた。これは、血中乳酸濃度が高いほど解糖系によるATP供給の割合が高いと仮定すると、筋内がより低酸素状態であったため解糖系によるATP合成率が高まった可能性が推測できる。

3) 13歳と17歳という発育期のステージが異なっているにも関わらず、運動部加入群のスプリント時の血中乳酸値および筋の酸素動態はほぼ同様な能力を示した。一方、コントロール群は、いずれの年齢においても明らかにそれらの能力において未発達であった。

本研究をまとめると、思春期前後期のいずれの被検者も運動部に所属し、日頃の活動量が高くなることによって、スプリント走中の解糖系の能力は成人と同等な能力を保持されること、およびこの能力の向上とスプリント走中の筋の酸素状態は密接な関係にあることが示唆された。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION