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ない中学1年生(13歳)7名(13Cont群)と高校2年生(17歳)8名(17Cont群)を、活動群の被検者として週4日以上部活動を行っている中学1年生(13歳:陸上競技部短距離)8名及び高校2年生(17歳:サッカー部)7名が用いられた。被検者はいずれも男性であった。さらに、比較の対象として一般成人(男子:平均年齢23歳、特別な運動習慣を持たない)5名を用いた。

 

2. 実験プロトコール

70mの全力疾走を間欠的に5本行った。各被検者について1本毎の疾走タイムを手動により計測した。各疾走のインターバルは2分とした。インターバル時被検者は立位にて安静を保った。距離を70mに決めたのは、いずれの年齢においても疾走速度が10秒前後になるためである。

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3. 近赤外分光法(NIRS)

近赤外分光法の装置は、オムロン社製(HEO-100)の携帯型を用いた6,7)。装置は、ベルトにて腰に装着され、酸素動態を検出するためのプローブは、疾走動作の主働筋の1つである右大腿部外側広筋上に伸縮性のテープによって固定された。なお、用いられたプローブの発光と受光間距離は3cmを用いた。したがって測定部位は皮膚表面から筋肉1〜2cm程度と考えられる6,7)。また、脂肪層は個人によって異なるが、今回は被検者に脂肪が少ない男子を用い、被検者各自のNIRSのキャリブレーション時の値からみて無視できると仮定した。

本研究で用いたNIRS法では、筋内の光密度の変化を測定することからoxy-Hb及びdeoxy-Hbの変化及び総Hb量(あるいは血液量:BV)の変化を観察することができる。データは、0.5秒毎に連続的に収集し、疾走前の安静時から、5本目の疾走後の回復期が終了するまで連続的に測定された。なお、本研究では、疾走中の酸素動態のデータとして、ゴール地点でのデータを採用した。

本研究で用いた装置は、方法論的に筋の酸素摂取量として測定することは現時点では困難である2.6.7)。そこで被検者間の比較を可能とするために大腿部ischemiaテストを行った6)。これは、大腿上部にカフを装着し250mmHgで加圧し、動静脈の血流を阻止することによって、deoxy-Hbが定常状態になる条件を設定しようとする方法である2)。それぞれの被検者の安静時からischemiaテスト中の定常状態の△OD値(ODは光の単位)をその人の100%筋の酸素能力と仮定し、スプリント中に得られた△OD値を換算して%表示で表した。

 

4. 血中乳酸

安静時、疾走終了直後(スプリント1、5本目)に採血を行い、血中乳酸濃度を測定した。採血は、疾走終了直後から1分目に行った。なお、測定方法は前年度報告書と同様である6)

 

研究結果

1. スプリントパフォーマンスの比較

表1に全5群のスプリントパフォーマンスとして、疾走1本目と5本目の各群の平均値を示した。1本目と5本目を示したのは、各群における全力疾走にともなう疲労の程度の差を検討するためである。

13歳群と17歳群において、スプリントタイムは1本目および5本目のいずれにおいても運動部群の方がコントロール群に比べて有意に速い値を示した。1本目と5本目のタイム差は、全ての群に

 

 

 

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