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6. 落合たちの報告について

落合たちは、学校運動部員の部活動への意欲とスポーツ活動の継続に関わる諸条件を、主として、社会・心理学的視点から調べて次の成果を報告している。1)中学生・高校生が将来もスポーツ活動を継続するか否かに影響をもたらす主な条件として「部活動場面における積極的な自己認識」「部活動における楽しさ」「スポーツの楽しさ」等をあげることができる。2)大学生における過去の運動部活動と現在のスポーツ参加状況に関連する主な条件として、高校期では「プレイや実力の向上可能性に関する自信や満足」「運動部活動の楽しさと満足感」「チームとしての実力や機能への満足感」等があり、中学校期では「指導者の効果性」「社会・心理側面での充実感」「技能や能力の側面での充実感」等がある。

以上に紹介したように本専門委員会では様々な視点から学校運動部活動のあり方について検討を加えている。久野たちは発育期における運動が筋の解糖系能力の発達にもたらす効果を示し、平野は従来から検討の求められているウォーミングアップの効果について、また、北川たちはわが国の学校運動部に普及している早朝練習の効果について、いずれも、基礎的な検討を続けている。

吉田たちは運動部全体の活動を対象にその練習量や部員の体力的特徴を明らかにしているが、ここでは特に、競技水準の高い運動部の中にも練習量の多くない例があるという報告内容に注目したい。田中たちは各方面で指摘されている一部の運動部のオーバートレーニングの原因は簡単に適切な走速度を選択する方法がないためであるとして、現場で容易に求められる適切な走速度の選択法を提示した。非常に合理的かつ実際的方法である。

これらの報告のそれぞれのテーマは、まさに、現在の運動部活動に関わって検討すべき課題であろう。この3年間の研究活動では、一部を除いては結論的成果を述べることはできなかったが、調査資料に基づいて今後の研究課題を提示できた点は一応の成果であろう。

最後に落合の報告に注目したい。この報告は、スポーツ活動の継続に関与する社会・心理学的要素を求めるために、一方では現在の活動が将来の活動につながる要因は何かを調べ、他方では過去の活動を現在につなげている要因を明らかにしようとした意欲的な内容である。本専門委員会は、望ましい学校運動部のあり方を主として生理学・体力学の立場から探ってきたが、落合の報告は別の視点からの研究として貴重なものである。特に、運動部活動に参加する側が部活動の意義をどのようにとらえているかを明らかにしたことに、高い評価が得られよう。学校運動部の望ましいあり方を提示するうえで、この視点は重要な役割をはたすものであろう。

 

 

 

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