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?T章 学校スポーツ活動への体育科学的接近

 

運動処方専門委員会3年間(平成6年度〜8年度)の研究のまとめ

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わが国のスポーツは、明治期以来、学校スポーツを中心にして発展してきた。この傾向は現在も変わらないが、ごく最近になってからは、スポーツ少年団に代表されるように学校外でのスポーツ活動も非常に活発になりつつあり、この情勢は今後も続くものと思われる。これには学校週5日制への移行による児童・生徒の自由時間の拡大という大きな社会的背景がある。発育期においては、身体活動が心身の発達に欠かすことのできない重要な要素であることはいうまでもないが、その活動は、彼ら一人ひとりの発達段階や体力に適切な内容でなければ効果が期待できず、場合によっては発達を損なう例も出てくる。

運動処方専門委員会では、現在の学校スポーツおよび近い将来に盛んになることが予測される地域スポーツ・社会スポーツの望ましいあり方を求めるうえで、まずは、現在の学校運動部を対象に様々な視点からその活動内容を調査し、得られた結果から今後検討すべき諸問題を明らかにしようとして「学校運動部活動のあり方に関する研究」をテーマとしてこれまで3年間にわたる活動を続けてきた、今回その成果のまとめを報告する。なお、個々の研究について、ここでは、要点を紹介するにとどめることにした。その詳細については各委員の報告を参照されたい。

 

1. 久野たちの報告について

久野たちは筋の解糖系能力の発達に着目し、子どもの疾走時の筋の酸素摂取能力を調べ、この能力が発育の段階や運動部加入の有無による活動量の違いによってどのような影響を受けているかを検討した。その結果として次のような知見が得られている。1)疾走能力の高い者は筋肉の酸素濃度が低い。2)筋内の酸素濃度の低い者は高い血中乳酸濃度を示した。このことについては、筋内がより低酸素であったために解糖系によるATP合成率が高まった可能性を推測できる。3)13歳と17歳という年齢で比較すると、いずれにおいても運動部加入群は疾走時の血中乳酸値および筋の酸素動態はほぼ同様の能力を示した。一方、対照群はいずれの年齢においてもそれらの能力の発達水準は低かった。

 

2. 平野たちの報告について

平野たちは各種の運動開始時の生体の反応を取り上げて、ウォーミングアップの効果についての基礎的な検討を行ない次の結果を得た。1)5回の両足での全力脚伸展運動と最大下での9分間の自転車こぎという2種の運動の前後に4.5秒間の全力自転車こぎを行なわせ、パワー出力値を中学1年生と高校2・3について比較した。パワー出力値の最大値は高

 

 

 

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