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これは病棟で結核を疑ったときにはすぐに入れるためで,その部屋は独立した空調をしています。手洗いについては『センメルワイスストーリー』というお話が残されています。センメルワイスさんは,手洗いの大切さを初めて証明した方ですが,手洗いの基本は何かというと,10秒ないし20秒プレーンな石鹸と流水による手洗いでよろしいと,これはCDCのガイドラインで示しています。手指消毒剤を用いる条件は,手洗いの設備が遠いときで,しかも手がひどく汚染していないときというように示されています。これは米国の感染管理専門協会が出しているガイドラインで示されています。

病院の建築の基本として手洗い設備を随所に設けることは,病院建築の基本として示されているものです。日本では残念なことにこの基本がないために,MRSA対策費5点の条件として手指消毒剤が出されています。これが本当にいい方法なのか,ナースの手にやさしいのかということを考えなければならないかと思います。

私どもの病院ではナースステーションのコーナーに手洗いシンクを置いています。しかし,この手洗いシンクだけでは足りないということがわかりました。それで病室の手洗いシンクにペーパータオルと液体石鹸を置くようにしました。いまはもう少し手にやさしい液体石鹸を見つけて,そちらに替えようとしています。MRSAを指標にして10月から11月の間に手指消毒剤を置いたのですが,内科病棟ではまったくゼロになりましたし,外科でも減っています。これが病院全体の発生率とは関わりありませんでしたので,手指消毒剤を使った手洗いの効果があると判定しています。そのキャンペーンをやめたところ,やはり元に戻っています。これを見て,しっかりとした効果があると考えたわけです。そして手が荒れない方法として手を洗うという方向に切り替えたわけです。

手洗いシンクにすべて液体石鹸を置いた前と置いた後のMRSAを指

 

 

 

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