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写真3は痰から検出されたカリニです。カリニという原虫として対応されてきましたが,最近遺伝子的な構造からは真菌に近いといわれています。

これ(写真略)は46歳で輸血で感染したAIDSの患者さんで,カリニ肺炎を起こした既往がありますが,それは治って,サイトメガロウイルス網膜炎を入院する4年前に発症しています。これに対してはガンシクロビルという注射薬が効きますが,これによって軽快した後も,維持療法として週5日間点滴静注を続けることが必要なわけです。ですから,ヒックマンカテーテルという中心静脈カテーテルを入れて訪問看護婦のケアのもとで,自分であるいは家族の協力により自宅で点滴しているのです。ところがカテーテル感染が問題になって,以前に3,4回カテーテル感染を起こし,今回もカテーテル感染による敗血症で入院してきました。カテーテルを抜去し,抗生剤を使って軽快しました。この人には光覚がわかる程度の視力しかないのですが,それでもまだ治療を続けてほしいと希望されたので,カテーテルを再び挿入して退院しました。

写真4はサイトメガロウイルスの網膜炎で,血管に沿って炎症による白い浮腫性の変化や出血性変化があります。放置すると失明するわけです。ガンシクビルは効きますが,やがて耐性獲得の可能性があります。

次の患者は,20歳の男性で,半年以上前から慢性的な下痢と発熱があって,倦怠感が強いということで入院されました。この人は血液培養検査により,2週間後にヒストプラズマという真菌が生えてきました。これにはアンホテリシンBという薬が効くので,それを始めたら下痢も発熱も消失して軽快しました。ところが,ある時に急に左の片麻痺が出現し,頭部のCTスキャンの検査で,脳内に膿瘍を疑わせる腫瘤性の変化が見られました。AIDSの患者でこのような周囲がリング状に造影さ

 

 

 

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