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れる腫瘤性の変化があった場合,トキソプラズマ脳症が第一に疑われます。それでトキソプラズマの治療薬を投与します。そして治療的診断をします。もしそれで効かない場合は,脳生検など詳しい検査をすることを考えます。この患者さんの場合はトキソプラズマを疑ってその治療をしたところ,症状は改善して, トキソプラズマ脳症と診断しました。リハビリを行って,退院しました。

AIDSの患者でもう一つ重要な中枢神経系の感染症としてクリプトコッカス髄膜炎があります。徐々に進行する頭痛と発熱という症状で受診した患者の髄液を調べると,墨汁染色でクリプトコッカスという真菌の一種が見られ,クリプトコッカス髄膜炎と診断されました。これに対してはアンホテリシンBという治療薬がよく効きます。その後フルコナゾールという内服薬に替えて一生にわたって投与するわけです。

この患者は人類学者です。中枢神経トキソプラズマ症の既往もありますが,それはよくなって退院しました。その後サイトメガロウイルス網膜炎を起こしました。この人も中心静脈カテーテルを入れて,自分で点滴しています。こういう状態でも,自分で点滴の薬剤を持って世界のあちこちを旅行しています。ですからAIDS患者はみんな弱っている人たちと思うと,そうではなくて,こういう活動的な人もいるわけです。このときは消化器症状と,肺に異常な病変があって入院したわけですが,その後開胸肺生検をやって, リンパ肉腫であるとわかったので,外来で化学療法を行うことになって退院しました。

この患者(写真略)は1992年に,結核の患者との接触歴があってツベルクリン反応が陽性で,結核薬で予防的治療を1年間受けた既往があります。今回は1カ月前からの咳,痰,発熱で入院しました。その後,腹部X線検査で肺に小さい結節影が多発して見られ,結核を疑って気管支鏡と肺胞洗浄検査を行ったのですが,結核菌は出ませんでした。腹部

 

 

 

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