る赤血球が破壊されやすくなって溶血が起こる。それが腎臓の機能を障害して腎不全が起こる。血小板も消費されて減ってくる。このようにして溶血性尿毒症症候群(HUS:溶血性貧血,腎不全,血小板減少)が起こる場合があります。
溶血性尿毒症症候群により脳血管に影響が及んで,けいれんや意識障害などの中枢神経症状を合併した場合を,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)といいます。潜伏期はだいたい3〜8日といわれ,やや長い。アタックレイト(Attack Rate),すなわちこの菌が経口的に入った人が発症する率は大体15〜30%ですから,菌が入っても実際は70〜80%の人は無症状で,ごく一部の人が発症します。発症するかどうかは一つには菌の量が影響すると思います。
食べたハンバーガーの加熱の程度と発症率との関係を調査した研究があります(表3)。ハンバーガーの汚染された肉を介しての流行の例についてのレトロスペクティブな研究ですが,ハンバーガーをよく焼いて食べた人の群では35人中発症者は1例で,アタックレイトは3%ですが,メディアムの程度で焼いた人では29人中9人が発症して31%の発症率,あまり熱を通さない程度のハンバーガーの場合は21人中9人が発症して43%の高い発症率でした。この結果から,熱を通さないとそれだけ菌量も多いので発症しやすいということがいえるわけです。