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しまったということでしたが,その場合も原因はサルモネラでした。

私も家族全員がサルモネラ腸炎を発症した例を経験しました。夫婦と子供2人が全員激しい胃腸炎を起こして,とくに父親が最も重い症状でした。脱水のために尿が出なくなり,急性腎不全で入院し,透析までには至りませんでしたが,輸液をして治療しました。またほかの家族3人も入院して,内科病棟の大部屋一部屋を家族4人で占めて治療したことがありました。全員回復しましたが,この家族は毎日のようにシラスを食べていました。熱を通さないシラスだったのですが,それがサルモネラで汚染されて,食中毒を起こしたようです。

また,次のような例もありました。某病院で調理士の定期的の便の培養検査で,ある時,3人の調理士からサルモネラ菌が検出されたのです。よく聞いたら3人ともまったく症状はありませんでした。どうしたことかとよく確かめたら,3人とも検便を出す前日に焼き鳥屋に行っていたそうです。焼き鳥を食べて下痢はしなかったのですが,その焼き鳥の中にサルモネラ菌が含まれていたと思うのです。調理士でしたから,サルモネラ菌が便から消えるまでは直接食事をつくることは慎んでもらいましたが,無症状でも排菌があることがあり得るわけです。実際はそのように無症状の人が多く,発病する人はごく一部であると思われます。

発病した場合はどうするかというと,軽症では抗菌剤は不要です。抗菌剤を使うとかえって便の中の菌の排出期間が長引くということもいわれております。しかし重症では十分な補液と抗菌剤(たとえばニューキノロン系抗菌薬)を使います。予防としては肉や卵等を十分加熱調理してから食べるということです。それから冷所保存,手洗いをよくすることです。

胃腸炎後の保菌状態は子供ほど長く続くようです。5歳以下の子供では3〜4カ月後にも半数の人の便から菌は検出されるようです。しかし

 

 

 

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