末期医療は緩和ケアヘと広がった
ターミナルケアとか末期ケアという呼び方は,外国では古い言葉になっています。代わってパリアティブケア(palliative care=緩和ケア)と呼ぶようになりました。2〜3週間の余命だろうという状態になった患者さんが,庭を散歩しているという状況をみますが,何がそうさせているのでしょうか。科学的に発展してきた緩和ケアの医療技術が,正しく末期の患者さんに適用され,患者さんが身体的に助けられ,心も支えられることで,死の前日まで散歩が可能な状態にもなりうるのです。それだけの力をもつ医療を,これからは癌医療全般に,さらには長期的に医療を必要とする慢性疾患のあらゆる分野に,すなわち医療全般に適用していくべきと考えられるようになったことから,末期ケアとは呼ばず,緩和ケアと呼ぶようになったのです。
“パリアティブ”という言葉は,“コートを着せる”という意味です。襲ってきた寒さを根本的に退治できないとき,厚いコートを着せて寒さをしのぎ快適性を保ってあげるという意味なのです。
しかし,この医療を実施するとき,原因となっている疾患の治療をしなくてもいいというわけではありません。適応があれば緩和ケアと同時にどんどん行っていくということも大切なのです。
癌治療を行っていくときに,注意すべきことがあります。3回行っても,4回行っても無効な化学療法を,5回も6回も繰り返すのは科学的に正しいとはいえません。緩和ケアの知識と技術を身につけていないと,何をしてよいかわからないものですから,癌治療が無効であっても,いつまでも繰り返していくという誤ったことをやってしまうのです。
緩和ケアの原則を考えてみましょう(表1)。
人間は生まれてきて必ず死ぬわけですが,この2つの現象はだれにも