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それを他のチーム構成員に伝えるという役目があります。きわめて重要な治療チームの一員としての役割です。

いろいろな人をケアします。いろいろな人に医療を行います。この“いろいろな人”というのは一人ひとりが違うということですから,基本を守るとともにその患者さんに合わせた医療と看護を行う柔軟性をもたなければいけません。また,どの患者さんにも尊敬の念をもつ必要があります。尊敬の念というのは,いくら心の中にもっていても,言葉や行為で相手に伝わらなければなりません。これらが2階の部分を作ります。

患者さんのいる建物(病棟や病室)は,庭があったり,絵がかけてあったり,きれいなカーテンがついていたりというように,人間らしさのある環境を整えておくのも私たちの役目ではないかと思います。ほこりが窓わくにたまっていても,それを掃除するのは私の役目ではないと平気な顔をしている人がいる一方,掃除を担当している人が別に決められていても,窓わくのほこりをサッと取り除く人もいます。患者さんに用いる器具に多少ほこりがたまっていても平気な顔で使わせているようでは,患者さんを人間として尊敬していることにはならないでしょう。

患者さんはどういう場合でも,何かをなし遂げたいと思っているわけです。「死を受容した」というと,みなさんは安心したりしますが,患者さんは明日も明後日も生きていく人ですから,やりたいことがあるわけです。それをなし遂げられるように手を貸してあげる必要があります。成し遂げたいことがたいしたことではないかもしれません。生まれてくる孫の帽子を編んでおきたいと思っているかもしれませんし,新聞を読みたい,連続テレビドラマのつづきを見たい,詩を書きたい,文章を書きたい,絵を描きたいと思っているかもしれません。希望がどんな小さくてもかなえられるように配慮しなければなりません。このようにして3階ができ,ホスピスの考えが完成します。

 

 

 

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