日本財団 図書館


か、1987年には神戸国際フルート作品作曲コンクールに入選、<今日の音楽>作曲賞入選等を経験している。現在、昭和音楽大学講師をつとめている。

氏のピアノ協奏曲の作曲意図は次のようなものである。

「ピアノ協奏曲という形態が自ら持つ様式美や特性をふまえた上で、自己の内面に時として現われる静寂から引き出された即興性をいかに純粋な形でとらえて楽想を展開するかが課題となり、また、作品の全体像を多様性のあるものにするための構図を形づくり、そこから新たな音楽的展望を表現しようと試みた。」

氏の作品の楽器編成は、フルート2、アルト・フルート(ピッコロ持ち替え)1、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ1、ティンパニ4、他の打楽器奏者3人、ハープ、ピアノ、弦5部である。

この作品についても、書法上、技法上の異議はなく、評価も高かったが、指揮者から若干演奏上に難点もなくはないという意見具申があった。

 

小栗克裕氏は昭和37年生まれの34歳。東京芸術大学大学院を1988年に修了。作曲を野田暉行、黛敏郎、三善晃の各氏に師事し、安宅賞のほか、神奈川県芸術祭創作合唱コンクール1位、IMC国際作曲家会議コンクール3位といった受賞歴を持ち、さらに当財団の作曲賞入選を第14回に果している。現在は聖徳大学短期大学部音楽科講師をつとめている。

氏は自作について、以下のように<作曲の意図>を語っている。

「世紀末にあたる現在にあって、たしかに世の中には予期せぬ事件や事故が多発し、多くの人命をうばい、人々の不安は日々、増す一方である。

“Destruction”とは“破壊”を意味し、こうした世の不安定な状態が、この曲を支配している。」

この作品は応募要領に即して<3管の通常編成>で書かれており、書法その他特別な論議の対象とはならなかったことは、まずまずの出来映えであったということになるだろう。指揮者による演奏上の問題点の指摘もなく、そうした面でも、氏のすでに長い手慣れた創作活動の成果であろうか。コンサート会場での響きに期待したい。

 

入選作以外でも、二、三、注目すべきものとして取上げられた作品もあった。一度、実際の音で聴いてみたいとの発言があったもの、あるいは、当初、票を集めたが、くりかえし論議がおこなわれる中で、次第に評価がネガティヴになっていったもの等々があったことを附言しておきたい。あらためての挑戦をお願いしたいものである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION