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東南アジアの経済的枠組み、引いては世界のグローバリゼーション化の影響を受けることとなろう。そして、ヴィエトナムの公務が、効果的・効率的に実施され、廉潔度・透明性を高めない限り、投資先・市場としてのヴィエトナムの優位性は他の国に対して失われていくであろう。いわば、経済活動に連動する形で、質の高い行政運営の競争が各国間で展開される可能性があり、そのことについてはヴィエトナム政府も認識しているようである。

 

(2) 職員の意識改革

効果的・効率的な行政運営のための1つの鍵は、職員の意識改革であろう。すなわち、自分は過去に国や党に対して功績があったのだから、政府職員として雇用されるのは当然であるという意識から、自分は政策立案・行政執行の専門家として公務に雇用され、給与を受けているという意識への転換である。また、社会主義の下では、国民は統治の客体、コントロールの対象として捉えられてきたと推定されるが、国民を国の発展を担うパートナーとして積極的に位置づけることも意識改革として重要である。さらに、現在のヴィエトナムは地縁・血縁を忠誠の主要対象としているが、これを組織・政府・国家へと忠誠の重点を移行させることができれば、さらなる発展が可能となるであろう。

これらの意識改革は、単に教育・研修や精神規定だけで達成されるものではなく、制度的な転換も必要である。たとえば、公務員法を制定し、職務における業績と昇進などとの関係を明確化することにより、自らの能力・努力は必ず報われるということを職員に認識させる仕組みを構築することが不可欠である。

また、政府と国民との関係については、最近、行政裁判所(administrative court)を設立したり、国民が政府の行政運営について自らの意見や不満を最高執行機関(中央政府機関)に伝えることができる「国民の苦情箱(Citizen's Complaint Post Box)」を設置しており、こうした措置の積み重ねにより、いわゆる「お役所風・官僚的態度」の一掃が期待されている。

ヴィエトナムは先のヴィエトナム戦争において、共産党の組織力、ホーチミン氏の類い稀なリーダーシップの下、国としての一体性を保持した国であり、戦争時に費やしたその莫大なエネルギーと国民の献身・努力意識に同国の潜在力がかいま見られる。現在の職員の大半は未だ従来の「公務意識」に囚われた世代であるが、競争試験によ

 

 

 

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