なく、地縁・血縁、党活動での論功が、職員の能力や行政部内での業績よりも優先しているのが実態であろう。
このような状況の下で、一部の幹部職員がその役得を最大限利用して懐を肥やし、役得に与れない職員は公務に専心するよりも、地縁・血縁などを利用して、役得可能なポストに就こうと必死になるか、アルバイトで生計を立てようとしているのではなかろうか。
2 公務の展望
(1) 公務に対する信頼
ヴィエトナムが指向している社会主義に基礎を置く市場主義経済化においては、国家・政府が果たす役割は必然的に他の諸国とは異なり、自らのプランに基づく、市場主義を導入しようとしている。また、市場主義化の過程では、都市と地方の格差、貧富の拡大などの経済問題のみならず、教育・治安・福祉など社会問題も増幅した形で噴出することが予想される。従って、同国の経済・社会の発展に際しては、他国にも増して、効果的・効率的な行政運営が不可欠と言えよう。
今や経済はグローバル化し、経済活動及びその影響は国境に阻まれることなく、各国間を行き交う。そして、経済と行政・社会は、截然と区別されるものではなく、経済の影響は行政・社会にも様々な影響をもたらす。たとえば、現在、OECDで議論されている「外国公務員に対する贈賄」を各国において刑事罰化しようとの動きは、当該禁止規定を有する国と有しない国とでは、経済活動の面で有利・不利が生じるので、統一しようとの考えに基づく。これは経済のグローバル化が先進国の刑法にもたらす影響の例だが、さらに、各国の汚職・腐敗は、自由な経済活動・貿易の非関税障壁になっているとの論議が、WTOを中心にして起きており、各国の汚職禁止規定が統一され、腐敗防止の運動がグローバル化することも将来ありえないことではない。
欧米の金融市場で、資金を調達しようとする日本の金融機関に対しては、一般的な金利よりも高い金利を要求するという「ジャパンプレミアム」は、我が国の金融システムに対する不信感に起因するが、その背景には、日本政府そのものに対する信頼感の欠如があるように思われる。この現象は、その国の行政運営が当該国の対外経済にもたらす影響の一例と言えよう。
ヴィエトナムは1995年にASEANの構成国となったが、これにより、今まで以上に