合意形成に多くの時間がかかるとともに、政策決定過程が不透明であると言われている。また、党以外でも意思決定はボトムアップによって行われることが多いようである。集団指導体制は一見民主的であるが、ややもすると指導者の派閥争いを生んでいるようにも思われる。
?B 文書主義
集団指導体制の下、その決定された内容は、正式な決定文書として発出される。そして、中央で公布された決定文書は、中央の各機関、地方の人民委員会を経て末端組織に伝達されることになる。こうした文書主義のルーツは相当深く、一つには中国式統治、また、フランス植民地支配に伴うフランス式官僚制度の影響ではないかとの意見もある。いずれにしろ、文書至上主義は、特に末端の行政運営を非効率なものにする傾向があり、さらに、職員の責任感を希薄にし、判断力・思考力の低下をもたらすのではなかろうか。
(5)職員のモラール・モラル
職員の士気・倫理観の低下は、ヴィエトナムにおいて非常に大きな問題となっており、政府は根の深い汚職・腐敗を「社会主義の危機」と受け止めている。1992年憲法では、「すべての国家機関、党幹部及び職員は、…官僚主義、傲慢、恣意、腐敗に対し、厳しく対処しなければならない」旨規定している。また、1996年11月に決議された5か年計画や党大会においても、汚職追放、公務の士気高揚は最重要課題として挙げられている。
しかし、汚職・腐敗を巡る状況はあまり改善されていないように思われる。度重なる汚職追放キャンペーンがその証左であり、また、国際貿易に従事するビジネスマンに対する調査によると、東アジア・東南アジアの国の中で、ヴィエトナムは中国に次いで汚職の度合いが高いと考えられているとの結果が出ている。
汚職・腐敗が広がっている背景には様々な要因があろうが、1つ挙げるとしたら、やはり低い給与・不明朗な昇進決定が挙げられよう。
給与については、勤続年数、仕事量、勤務成績などにあまりウエイトを置かず、比較的フラットな配分をしている。そもそも給与原資が小さいため、こうした配分により、ほとんどの職員の給与額が非常に低くなり、特に民間企業、いわんや外資系企業の給与と比べると極端に低い額となる。また、昇進については、そのルールが明確で