どのようにして行政を運営するかという方法論についても、知識と理解の深刻な不足に苦しんでいるものと思われる。
もちろん、上記のような資質・能力・技術を有する者はヴィエトナム国内又は海外に留学している者の中に少なからずいよう。しかし、市場指向型経済と民間経済部門の発展に伴い、低い給与等の勤務条件、党の意向に従った昇進などといった人事慣行をひきずる公務は、相対的に魅力の乏しい職場になっており、こうした者の中で、公務に入ってくる者の数は限られているのではなかろうか。
なお、政府組織・人事委員会の「職員の能力に関する調査」では、「能力が劣る」と判断された職員が調査対象の約40%を占め、うち、半分は更迭必要と判断されている。一方、十分な能力があるとされた者は40%で、残りの20%の職員が許容範囲であるとの結果が出ている。
(4) 効率的な公務遂行
開発途上国を訪れて感じることに、先進国に比べて業務遂行に時間がかかる点がある。業務の内容は同じであっても、我が国であれば数日で処理されるような事柄でも、途上国では数週間要することもあり、さらに、時間を要しても目的が達成されればいい方で、全く処理されないことも少なくない。こうした非効率の原因がいずこにあるかは外部からは容易に把握できないが、ヴィエトナムにおいては、以下の3点が非効率な公務運営の一因になっていると思われる。
?@ セクショナリズム
前述したように縁故採用が少なくないヴィエトナムにおいては、地縁・血縁などのつながりを有する職員が当該行政機関の幹部を始めとするポストを占めることが多々ある。また、他機関との人事交流は基本的に行われておらず、省庁間の横の連絡は極めて悪い。いわば、一省庁が一独立国のごときの様相が見られ、こうした傾向は、中央のみならず、地方、国営企業など、国内いたるところに存在するとされている。
?A 集団指導体制
ヴィエトナム共産党は集団指導体制を採っており、党の政治局員(1997年末現在19名)、特に、政治局常務委員(現在は、党書記長、国家主席、首相、国会議長、党大衆動員宣伝委員長の5名)が最高権力を握っているとされる。集団指導体制は