・上述したように職員の採用にあたっては縁故採用が少なくなかったが、それはヴィエトナム戦争勝利の論功行賞の結果でもあるとされる。すなわち、戦争の結果ヴィエトナムが得た物資は、軍事物資以外には乏しく、結局のところ、勲章、社会的ポスト、政府の各機関のポストなどを功労者に贈ってその功績をねぎらうしかなかった。そのため、各機関には次官相当職、次席、顧問など、業務の必要性からではなく功績のために設置された官職が少なくない。こうした官職の設置により、組織の命令系統はより複雑になっている。このような経緯もあり、縁故採用により入職した職員を整理することは困難と思われる。
(3) 職員の資質・能力
政府職員の資質・能力に関しては、前述した縁故採用や職務内容に適していない職員配置の問題のほかにも、以下のような問題があると思われる。
1つは、行政需要や行政手法に即した能力・技術を有する職員の不足である。行政ニーズや作業手法などが以前とはかなり変化してきており、職員に求められる資質・能力も変化している。こうした変化に対応すべく、現職員の能力育成や、適した技術を有する職員の採用を進めようとしているが、十分には対応できていない。
たとえばその顕著な例は、経済理論や経済手法である。資本主義・市場主義経済に精通した職員は、まだ数少ないであろうし、そもそも育成にあたるべき講師も少なく、資本主義に通じた外部の人材の採用も困難と思われる。
より卑近な例としては、パソコンなどの事務機器の使用に対する職員の知識・経験不足が挙げられる。また、諸外国との折衝、交流、知識の導入には、いまや英語が必須であるが、ヴィエトナム戦争の経緯もあるためか、すくなくとも40歳代以上の中堅職員の中には英語を理解する職員は非常に少ない。経済知識や理論に優れた職員と同様に、パソコンや英語を理解する職員も、効果的・効率的な業務運営には不可欠であり、特に、前者の職員は比較的少数いれば需要は充たされるのに対し、後者の職員はマスとして必要なのである。
さらに、法律に基づく行政運営への転換は国の基本方針であるが、その方針変更にまだ意識がついていっていない職員が多いと思われる。法律、規則、通達といった法令規範を熟知し、また、予算要求・執行・決算といった手続き・過程に精通した職員は非常に少ないようである。多くの公務員はいかなる政策を実施するかに加えて、