る存在」として、共産党の政府に対する指導的地位が明記されている。行政府のみならず、立法府を通じて国家主席や司法府も実際に指導できる仕組みになっており、いわゆる「共産党一党独裁体制」が構築されている。
共産党と行政府の関係を定めた規則は、従前存在したが、10年前に廃止され、両者の関係は規則・実態とも明らかではない。公務員の幹部は必ずしも党員である必要はないが、実態としては、その多くは党員と推定され、昇進決定過程にも党の意向が強く反映される仕組みになっているようである。ちなみに、政府組織・人事委員会より聴取したところによると、同委員会職員の約3分の1が党員であるとのことであった。
いかなる統治体制・政治体制を採ることが望ましいかについては議論が大きく分かれるところであり、また、本報告書の関心事項でもない。しかし、上記のような党と行政府との関係は、効果的・効率的な公務運営に対して以下のようなマイナスの影響をもたらしているのではないかと危惧される。
すなわち、実態としての指揮命令・忠誠の対象が所属行政機関と党に分散する可能性があり、特に、所属行政機関と党の方針・考え方が異なる場合には、分散が引き起こす混乱、効率的な業務への悪影響は小さくないと思われる。そして、党の方針・考え方とは、日常的な行政運営の場面において、当該行政機関を所管する党の委員会の幹部職員の方針・考え方を意味すると思われるが、これらの幹部職員の方針は、制度的には党の委員会、党の大会、国会などの諸機構を経て、初めて行政府・所属行政機関の方針になるものであり、ある時点において両者の方針に差異が存する状況は、珍しくないと予想される。
(2) 政府の役割・公務員数
ヴィエトナムは中国と同様に社会主義を維持しつつ、市場主義経済化を推進している。しかし、市場指向のメカニズムの導入開始から約10年足らずにすぎず、国家の役割についてはいまだ議論が収斂していないように思われる。社会主義としての国家統制システムを整理しつつ、市場メカニズムに適した政府の役割を探求しているが、旧システム・慣行のすべてが整理・廃止されているわけではなく、また、旧弊に従って、本来市場メカニズムの下においては政府の統制・関与を必要としない事項であっても政府がコントロールしているケースもあるように思われる。
ところで、政府の基本方針の1つに法治国家の建設が挙げられる。つまり、法律を