1965年の独立時から現在まで約30年、PAPの政治独占が続き、支配政党と官僚の一体化が進んでいるといわれている。官僚は中立的ではなく、政権党にコミットして、協働関係にある。労使紛争も過去10年以上発生していない。
官僚の政治家への転身も頻繁に行われている。シンガポールの有力政治家の経歴は、国費留学生として、欧米の大学に留学し、帰国後、官僚になる。その後30歳代半ばで政治家に転身して国会議員となり、閣僚クラスのポストに就いて能力を試されながら経験を積む、というのが一般的なパターンである。ただし、エリート官僚が全員政治家に転身するわけではない。
〈シンガポール流の開発主義〉
エリート官僚が政府の各省庁、準政府機関、政府系企業のトップのポストを兼任し、政策・計画の策定と実行を兼務している。意思決定と実行の一体化が行われている。高級幹部は、経営手腕も求められている。
無資源国家のシンガポールは、経済発展を国家主導、行政主導、専門能力を持つ官僚主導で進めてきた。
官民一体の国家運営は、この国の典型的なエリートの歩むコース、すなわちエリート教育⇒国費による海外留学制度⇒官僚⇒準政府組織、国営企業の経営者⇒政治家⇒閣僚という流れからも見て取れる。
経済発展を最優先にした開発主義的な政治体制、すなわち行政主導の下で、国家の発展が実現した。開発主義、官僚主導による国家発展には、先見性、政策形成能力さらには、責任感、廉潔性をもった官僚の存在が必要になる。
政治が絶対的な基盤を築いて、圧力団体や利益団体を政治過程から排除し、官僚に政策と実行のフリーハンドを保障した行政の仕組みが出来上がっている。議員立法は皆無で、官僚の企画立案による政府提出法案は、100%国会を通過する。
このように官僚に社会からの相対的な自律性が保証されていること、政治的な利害の調整がなく、もっぱら効率の追求に専念できることが、官僚の能力発揮の源泉といえる。
職員の任用は、下級公務員に至るまで、完全に能力主義(Merit System:Spoils Systemの排除)の原理が貫かれている。
しかしながら、経済の発展とともに、すなわち、経済発展の結果、官僚以外の職業に