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議論をすることにより、より効果が高まるであろう。しかし、講師がつく形での研修がいつも可能であるとは考えられないことから、研修教材単独で、つまり自習用にも利用できる形式にする必要があろう。また、ちょっとした疑問が生じたときや、後から一部分だけ振り返りたいときに、部分的に参照できるようにすることも教材の利用価値を高めるであろう。

以上の点を勘案して、本研修教材は各項目ごとに内容をまとめたシート形式とする。

 

(3) 各国に使用可能な研修教材の開発は可能か

ところで、効率的な公務遂行、士気・倫理などと言っても、何が効率的な公務遂行か、より良い倫理観とは何かなどは、その国の統治形態、政治体制、文化、宗教などにより異なり、各国に共通化しうるのかという疑問があろう。特に、これらの理念を内面化し、行動規範にまで昇華するとなると、なおさら共通化された研修教材の開発など不可能ではないかという意見があろう。

しかし、効率的な公務遂行とは、より少ない資源でより大きな効果を達成することであり、公務の内容自体には関係なく、いわば方法論である。そして、方法論には政治的、社会的、文化的要素が入る余地は少ないと言えよう。「黒い猫でも、白い猫でも、ねずみを獲る猫は良い猫だ」という言葉があるが、ねずみを捕まえることが目的だと定まれば(つまり政策が定まれば)、ねずみを獲る効率的な方法(効率的な公務遂行)は、その猫が黒であろうと白であろうと(どの国であろうと)、共通化しうるのではなかろうか。

一方、高い士気・倫理観は、各公務員の内面の意識そのものに関係することから、その国が置かれている状況のみならず、私生活を含め、その個人を取り巻く状況すべてが影響すると言えよう。従って、効率的な公務遂行以上に倫理などに関する共通化した研修教材の作成は困難ではないかとの懸念があろう。

しかし、各国の倫理綱領などを見てみると、その理念・基本的な内容は酷似している。どの国も汚職は禁じているし、職務に精励することを公務員に対し求めているのである。公務員の汚職件数や、職務への精励度(数値化することは困難であるが、国によって異なっていることは疑う余地がない)が国により異なっているため、士気や倫理に対する考え方も異なっていると思われがちなのであろう。実際には、士気・倫理感に関する基本理念はどこの国でも大差なく、共通教材の作成は可能なのである。

また、上述するように教材を分割可能なシート化することにより、ある項目につい

 

 

 

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