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政策を論じることは本事業の目的ではないので、ここで述べることを控える。また、政策決定に至るプロセスも公務への信頼獲得には重要な要素であるが、政策決定過程論も本事業の対象外である。

本事業では、信頼される公務を構築するにあたっての重要なポイントである、政策の実施に焦点を当てて論じることとする。政策実施に際して留意すべきは、決定された政策をいかに効率的に実施するかである。なぜならば、政策の効果や政策決定の善悪は俄かに判断しがたいが、政策が効率的に実施されているか否かは、比較的容易に判断できるからである。実際、計画の実施という行動面について見れば、民間と公務の活動で外見上の差異はなく、民間との比較が可能なのである。

さらに、公務では民間と比べて、会計や調達の諸規則などを始めとして、公平性などを尊ぶために効率的な活動・柔軟な活動のマイナス要因となる活動規範が定められており、効率的な活動という意味では、公務は民間に対してハンディを負っているのである。従って、公務においては民間セクター以上に効率性に留意しなければ、国民の目には非効率に映るのである。以上のことは、経済的な資源に乏しい途上国政府にはなおさら当てはまるのではなかろうか。

 

(2) 士気・倫理観の高揚

ところで公務及び公務員に対する信頼感を損なう最も大きな原因として公務員による汚職がある。今回調査した途上国に限らず先進国においても、公務員の汚職についての記事が新聞に掲載されていない日がないと言っていい。

汚職が発覚すると、しばしば汚職行為を行った公務員は何万、何十万人いる職員のうちのほんの一部分の職員で、他の大多数の公務員は規律正しく職務に精励しているとの説明が政府当局により行われることがある。確かに事実はそうかもしれない。しかし、国民は、汚職が発覚したのは氷山の一角であり、その他多くの公務員も不正行為をして私利私欲を貪っているに違いないと思うのである。つまり、氷山の一角なのか否かにかかわらず、たった一人の公務員の汚職が、公務全体の信頼感を損なってしまうのである。

一方、公務に対する信頼感は、一握りの公務員が適切に公務を遂行し、高い規律を維持していても醸成されるものではない。せいぜい、あの人は公務員らしくない人だと、例外扱いされる程度であろう。公務への信頼感は、大多数の公務員が高い士気と倫理観を持って、長年に亘って公務を励行し、国民にそのような公務員の姿を認識し

 

 

 

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